「偽装請負」とコムスン問題2007年07月14日 22時26分17秒

最近読んだ本です。「偽装請負 格差社会の労働現場」(朝日新聞特別報道チーム 朝日新書)

バブル崩壊以後、正社員を取らずに、非正規雇用が増えているということは知っていました。しかし、「(偽装)請負」や「委託」「派遣」などの雇用形態が具体的にどんなもので、何が問題なのかということが、今ひとつピンときていなかったのですが、この本を読んで良く分かりました。

要するに、企業の利益を上げるために、好きなときに好きなように安く労働者を使えるようにするという仕組みだということです。労働者を、人格を持った人間としてではなく、使い捨てのできる単なる「物」として利用する仕組みだと言って良いかと思います。社会保険にも雇用保険にも入れずに、都合の良いように労働者を使い、事故が起きても一切責任を負わない、そういうケースも少なくないといいます。

こういう不正行為を、キャノンや松下などの超一流企業が率先して行っていたというのですから驚きです。キャノンの社長の御手洗氏は、日本経済団体連合会の会長であり、安倍政権の経済財政諮問会議の議員をやっています。そのお膝元の企業が、こういう違法行為を堂々とやっていたのですから、話になりません。

景気が回復しているといいますが、「偽装請負」などで、これだけ人件費を安くあげていれば、企業の収益が上がるのは、ある意味当たり前です。問題は、正社員も含めて、働く人の賃金が増えないということ。これでは、企業だけが潤って、国民は潤わないということになってしまいます。今、大企業は、多国籍化していますから、自分たちが儲かれば、日本の国民が潤うかどうかなどということは関係ないということなのでしょうか。しかし、これは、国の経済のあり方としては、健全なあり方ではありません。

「偽装請負」や派遣労働に共通するのは、雇用主と実際の使用者が異なる「間接雇用」だということです。こうした「間接雇用」は、1985年までは、職業安定法で、労働者供給事業として罰則付きで禁止されていました。1986年の労働者派遣法で、一定の制限付きで、例外として間接雇用が認められました。その後、「規制緩和」の流れの中で、なし崩し的に拡大され、現在のような大きな問題を引き起こすまでになっています。

派遣業者の最大手だった「クリスタル」という会社がありました。2006年3月には、年間売上高が6000億円にものぼる、知る人ぞ知る人材サービス業の国内最大手でした。2006年10月に、この「クリスタル」が買収されますが、買ったのは「グッドウィル」。「グッドウィル」と言えば、例の介護報酬不正請求で問題となった「コムスン」の親会社です。

介護保健制度も、「規制緩和」「民間活力導入」という流れの中で、導入された制度でした。「偽装請負」問題もコムスンの問題も、根っこは同じであると思います。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://genkikko-koike.asablo.jp/blog/2007/07/14/1654263/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。