「子どもにやさしいまちづくりフォーラム」~桜井智恵子先生の講演会に参加して2013年02月11日 19時10分02秒

昨日、中央公民館で、私も所属している「みんなのまち草の根ネットの会」と草加市の共催で「子どもにやさしいまちづくりフォーラム」が行われました。

 

講師は、兵庫県川西市の人権オンブスパーソンを務められていた桜井智恵子さん(大阪大谷大学教育学部)です。桜井先生は、昨年、岩波新書で「子どもの声を社会へ~子どもオンブズの挑戦」を出版されました。この本は、教育や子どもに関わる方には是非とも読んでもらいたい本です。

子どもの権利条約に関わる講演会を草加市と共催するにあたり、是非ともこの講師をとお願いしたのが桜井先生でした。私たちの意をくんで、今回の講演会を実現してくれた市の担当課に感謝です。

人権オンブスパーソンの話だけでなく、今の子どもたちの状況をとりまく話をていねいにお話し頂きました。今の子どもたちが深刻な状況を抱えているということ、そしてそれを解決していくためには、親や個人の責任だけを問うのではなく、人と人との繋がりを大切にして、みんなで考えていく必要があるということを強調していました。お話を聞いていて、私たちが感じている問題意識と全く同じだと思いました。子どもを真ん中にして、親と指導員が共に手を取り合って子育てをしていくということ、さらに父母会を中心としながら、地域ともつながっていくということ、私たちが目指している方向性が間違っていないんだということを改めて確認することが出来ました。

講演の中で、印象に残った言葉やお話を少し書いてみます。

「自己責任と言われ『自立』しろと言われるが、一人では『自立』できない。みんなで支え合って、つながりあうから『自立』ができる。」湯浅誠さんも、以前ある番組で、「自己責任による『自立』は、『自立』ではなく『孤立』である」と言っていました。こういうまっとうな意見を、もっともっとたくさんの人が言って欲しいと思います。

「疲れた時にはゆっくり休み、人生を『しのいでゆく』ことも必要。人と人とのあたたかい関係の中で、また自分の中に『力』が戻ってくる。それがエンパワーメントということ。」本当にその通りだなあと思いました。教員は、いつも生徒達に「頑張れ!」と言ってしまいがちですが、「無理をしなくもいいんだよ」「あなたはあなたのままでいいんだから」と言ってあげることが大切なんだなあと改めて思いました。

アメリカの政治学者ロバート・パットナムの言葉-「経済活動に一番必要なものは社会資本、つまり人々の繋がりであり、競争ではない。競争したら人々の絆は痛む、そうしたらとりかえしのつかないことになる。」含蓄のある深い言葉だと思いました。彼の本を読んでみたいと思って、早速アマゾンで「孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生」という本を注文しました。(7,000円もする本だったのでちょっと躊躇しましたが、カスタマーレビューを読んでとても面白そうなので思い切って注文しました。)

子どもの権利条約に関連して、フィンランドの携帯会社ノキアの話もとても興味深かったです。ノキアが、幼稚園や保育園児など就学前の子ども用の携帯電話を開発したのだそうですが、それに対して国家オンブスパーソンが、「それは商品化してはいけないと私たちは考えるという」意見を出し、ノキアはその商品の開発はしたものの、販売を見送ったのだそうです。「子どもの最善の利益」にふさわしくないと判断すれば、企業活動に対してもきちんと意見をいうことの出来る仕組みがあるということがすばらしいと思いました。

桜井先生がオランダに行った時のお話も面白かったです。オランダは、ワークシェアリングが進んでいるということで有名です。正社員もパートも、働く時間の長さの違いだけで、一切差別せずに、パート社員であっても年金も社会保険も医療保険も全て付いています。その家庭の状況に応じて、どういう働き方をしたら良いのかということを自由に選ぶことが出来ます。

子育て中の夫婦の場合は、父親が4日間、母親が3日間という働き方が一般的なのだそうです。2人で1.5人前というのが合い言葉。こういう働き方のことを、自分たちで仕事をあつらえるという意味で、テイラードワークというのだそうです。仕事を分け合って、誰でもが必ず仕事があるという状態であり、それぞれが自分たちの都合に合わせて仕事を選ぶことが出来ます。収入が減ったとしても、その分時間が出来ます。生きていく上で収入よりも時間の方が大事なことがたくさんあるということを、みんなが認めているのだと思います。

桜井先生が、オランダの人に「お子さんの将来について心配は無いですか?」と聞いたら、「オー、ミズ桜井、将来なんてそんな哲学的な質問」と言われのだそうです。逆に、「どうして日本の保護者は心配なんですか?」と聞かれ、「仕事がなかなか無いから」と答えたら、「オランダは大丈夫、子どもたちは必ず仕事があるから」という返答だったそうです。さらに、「もし今勉強しかしていなくて、遊ばなかったらとても心配なんですけど」と言われたそうです。

雇用が安心だから、教育も安心で、子育ても安心になるのだと思います。日本でも、そういう社会をこそ作っていきたいものだと思いました。

会場いっぱいの80名以上の方に参加して頂きました。担当課長だけでなく、子ども未来部長、副部長など、多くの行政の方も最後まで聞いて頂いたということもとても嬉しかったです。

「何で皆が幸せになれないんだろう?」~教え子とホームレスさんとの会話2013年01月13日 21時39分56秒

先日、21歳になる私の教え子が、フェイスブックに、次のような長文の書き込みをしていました。今の社会の状況とその中で何か必要なのかを考えさせてくれる文だと思います。長くなりますが、ぜひとも多くの人に読んで欲しいと思い、紹介します。是非とも、お読み下さい。

昨日、上野で煙草を吸ってたらホームレスさんに煙草をせがまれて、煙草とたまたま持っていたホッカイロあげたら、「ありがとうって」何度も言って泣き崩れたんだ。

私、「えっ?えっ?」ってなって、困惑してたら、「人に優しくされたの久しぶりだ」って言い出したんだ。ホームレスさんが煙草せがみに来るのなんてよくある話で、私も何度も渡してきたし、「そんなことで泣かないでよっ」て言ったら、今日何人にも声かけてみんな蔑む目で見て無視して、私がやっとくれたんだって。おまけにホッカイロまでくれるなんてって言って目頭熱くしてるから、胸が痛くなって、開けてない煙草一箱渡したら、「本当は煙草吸ったこと無いからいらないよ」って。だから私が「じゃあ何で煙草せがんだの?」って笑ったら、ホームレスさんも本当だよねって笑って、「煙草吸ったら何か変わるかなって思って」って言ったんだ。

人それぞれの事情があってホームレスになる人もいれば、自分から好んでホームレスになる人もいるし、きっと辛いことがあったのかなと思いつつも黙って煙草吸ってたら、ホームレスさんが急に自分の経営してた会社が倒産して家族も失って生きる意味が無いって言い出したんだ。この不況でずっと赤字でも何とか立て直すために家族のために頑張ったけど限界がきてたくさんの物が差し押さえになって親戚もご友人も頼れなくなって離れていって、奥様もお子様も離れて行っちゃったんだって。だからホームレスになったって。

自分だけの衣食住のためなら、こんなホームレスにならなくても色々な術はあったけど、今まで家族のために頑張ってきて全て失って何もする気にならなかったらしい。何度も死のうって思ったのに、死ねなくて、でも生きる気も起きなくて、ただ時間が経つのを待っているんだって。

ホームレスの世界にも色々なルールがあるらしくて、それも自分には合わなくて、吸えない煙草を吸ってみようと思ったんだって。何だろうな。ホームレスさんと話して、そのホームレスさんはとても良い人なんだろうなって思えて、何でこんな人がホームレスしちゃってるんだろうって思うくらいで。でも自分は何もできなくて。ホームレスさんが言った生きる意味がないって言葉がやけに重くて。かける言葉がこんなにも出てこないものかって思うぐらいだった。

私は社長じゃないから雇ってあげることも、頭よくないからホームレスさんを上手く動かすことも、お金がないから家も与えてあげることもできなくて、それ以前に生きる意味を与えられなくて、自分の無能さを凄く感じた。年齢を聞いたらまだ41歳って。でも見た目は失礼だけど50代後半に見える程で、どれだけ苦労して悩んで辛かったのかそれだけで分かる程で・・・。

ホームレスさんとお話してる最中、何度も私たちの前を人が通ったんだけど、その光景は一般の人からしたら不思議な光景なのかもしれないけど、初めてって言っていいくらい冷たい目を向けられて、ホームレスさんは毎日そんな目で見られてるんだって思ったら言葉にならないぐらい胸が痛くなった。沢山のお話を聞いて、ホームレスさんはありがとうって。私は若いのにいい子だって沢山褒めてくれて、「大好きで大切な人と一生一緒にいられるように今を頑張れ」って。

自分のことだけじゃなく他人を応援して、人の優しさをちゃんと感じることができる人で、会話していくうちに沢山の知識を持っている人でもあって、経営破綻したけども頑張ればやり直し出来たんだろうなって思える人で、でもそれが出来なくなったのは大事な人を失ったからであって、逆を言えばそれほど大事にしてきて沢山の愛情を持っていた人だったんだよね。最後私は「風邪ひかないでね」しか言えなくて、一日経った今あのホームレスさんがもしこの世からいなくなってしまったら嫌だなって。もう一度頑張って、幸せを味わってほしいなって。でも何もしてあげることの出来ない自分とこんな人は日本だけでも山ほどいてキリがないっていう現実に悲しくなった。なんで皆が幸せになれないんだろう。

直接本人にも言っていますが、この文を書いた子は、私の32年間の教員生活の中でも、卒業させるために最も心配し、苦労した生徒の一人です。卒業させるだけが精一杯で、きちんと進路を決めてあげることは出来ませんでしたが、今はまじめにきちんと働いています。

本当に心優しい素敵な女性になってくれました。

「なんで皆が幸せになれないんだろう?」この問いに、真剣に答えるのは、私たち大人の責任だと思います。

草加市自治研究集会に参加してきました。2012年11月18日 20時20分12秒

今日は、1日、「草加市自治研究集会(草加をもっと住みよくするための話し合い)」に参加してきました。

午前中は、「草加市の明日を自らの手で開くために-いま市民と自治体に託されていること-」と題して、自治体問題研究所の池上洋通氏による記念講演がありました。

冒頭、次の様に現在の日本と世界の政治について、語っていました。

6年間で6人も首相が代わるというのは、1889年明治憲法下で帝国議会選挙が行われ、曲がりなりにも日本に議会政治が誕生して以来かつてなかった、極めて異常な事態である。選挙公約で言ったことと全く反対のことが平気でなされたり、自治体の長を任期途中で勝手に辞めて他の選挙に出たり、無責任政治家が列をなしているのが、今の日本の政治の現状である。

ジャスミン革命と言われるチュニジアでの政治変革、30年近くにわたって独裁政治を行ってきたムバラク政権を打倒したエジプトの民主化の動きなど、今世界中で変革の波が起こっている。ヨーロッパでは、11の政権が変わった。それを実現してきたのが民衆の力である。アメリカでもその変革が起きている。日本の新聞の大方の予想を裏切って、今回オバマ大統領が再選を果たしたが、その一つの鍵を握っていたのがウィスコンシン州。前回の知事選では、共和党が勝ち、議会でも共和党が多数を占めている。しかし、今回の大統領選挙では民主党が勝った。それはなぜか。州知事が、組合とは団体交渉をする必要がないなどという反組合法を提出したことに反対し、十万人を超える人々が州都マディソンに終結した。こうした民衆の大きな動きがアメリカでも起こっている。今の日本の政治を、こうした世界の民衆の大きな運動、流れの中の一つとしてとらえなければならない。

今の日本の政治の状況を、そのまま許すかどうかということが、私たち「主権者」に問われているのだと思います。草加を変え、日本を変えるのは、誰か他の人がやってくれるわけではなく、「主権者」である私たち自身が立ち上がり、変えていかなければならないのだということを池上先生は言いたかったのだと思います。

 

憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」としていますが、「不断の努力」をするのは誰なのかと言えば、それは私たち自身以外にありえません。

豊富な資料も用意して頂き、その他にも、学んだことたくさんありますが、長くなりますのでまたの機会にします。午後の分科会も、多くの学童保育指導員、若い保育士さんが多数参加し、とても有意義な論議ができたと思います。

湯浅誠さんの「ヒーローを待っていても世界は変わらない」を読んで。2012年10月21日 21時08分16秒

最近読んだ本の紹介です。「ヒーローを待っていても世界は変わらない」(湯浅誠著 朝日新聞社)

今の世の中に憤り、何とか変えていきたいと思っている全ての人に読んでもらいたい本です。

知っている人も多いと思いますが、湯浅誠さんは、「反貧困ネットワーク」事務局長やNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の理事などを務め、貧困問題の解決のために精力的に活動されている方です。

この本の冒頭で湯浅さん自身が述べていますが、この本は、「民主主義」についての本です。

今の社会は確かにいろんな問題を抱えています。それぞれにとって理不尽と感じることもたくさんあります。そうした中で、その問題を解決してくれる「ヒーロー」を求めるという社会的な土壌が育まれていくのにもそれなりの理由があります。ちょっと前では、「自民党をぶっ壊す」と公言して登場した小泉元首相、今で言えば、大坂市長の橋本徹さんに、世の中を変えてくれる「ヒーロー」としての役割が「期待」されていると言っていいでしょう。しかし、そうした「ヒーロー」に「期待」することでは、世界は変わらないし、逆に世の中を変えていく本当の力である「民主主義」そのものを掘り崩すことになってしまうということを、実に分かりやすく説明しています。

「『強いリーダーシップ』を発揮してくれるヒーローを待ち望む心理は、極めて面倒くさくて、うんざりして、その上疲れる民主主義というシステムを私たちが引き受けきれなくなっている証ではないか」と湯浅さんは指摘しています。「民主主義の『面倒くさくて、うんざりして、その上疲れる』面ははっきり言って引き受けたくない。そのときに出てくるのが『決めてくれ。ただし自分の思い通りに』という言い分」です。しかし、この願いは必ず裏切られます。なぜなら、「ある意見では多数派であっても、別の意見に関しては少数派だと言うことがありうる以上、それは誰にとっても望ましい願い」とはなり得ないからです。

「『民主主義』と『面倒くさくて、うんざりして、その上疲れる』という、切っても切れない二つのことを切り離そうとしてしまったこと」により、「その中身は空洞化し、形骸化していきます。」「『強いリーダーシップ』を発揮してくれるリーダーを待ち望む心理は、民主主義の空洞化・形骸化の結果」ではないかというのが湯浅さんの主張です。

次のような指摘も、「なるほど!」と納得しました。

「民主主義とは、高尚な理念の問題というよりはむしろ物質的な問題であり、その深まり具合は、時間と空間をそのためにどれくらい確保できるか、というきわめて即物的なことに比例するのではないか。」

仕事と生活に追われ、じっくり考え、面倒くさいいろんな意見の調整をするということを自ら放棄することにより、自分たち自身で民主主義を空洞化させてしまっているのではないかと、深く反省させられました。

この本の締めくくりに湯浅さんが書いた次の言葉を、深く心に刻みたいと思います。

ヒーローを待っていても、世界は変わらない。誰かを悪者に仕立て上げるだけでは、世界は良くならない。

ヒーローは私たち。なぜなら私たちが主権者だから。

私たちにできることはたくさんあります。それをやりましょう。

その積み重ねだけが社会を豊かにします。

是非とも多くの人に読んでもらいたい本です。

米兵による暴行事件、基地問題、オスプレイの配備強行~日本はアメリカの植民地か!2012年10月17日 21時33分30秒

16日に沖縄県で起きた米兵による女性暴行事件を聞いて、「またか!」と思い、怒りを覚えました。これまでも何回も繰り返され、そのたびに謝罪と綱紀の粛正が叫ばれているにもかかわらず、いっこうに減らない犯罪。もういい加減にしてくれという思いです。

今沖縄の基地には、イラクやアフガニスタンなどで、多くの戦死者をだし、自分自身も生きるか死ぬかの戦闘をしてきた兵士が戻ってきていると言います。沖縄では、自治体の真ん中に基地があり、そういう極限状況の中で戦闘を行ってきて極度に緊張状態にある兵士が、ごく普通に沖縄の街を歩いているわけです。こうした中で、米兵による犯罪が繰り返されています。

日米地位協定により、米兵の公務中の行為は、日本が裁判を行うことが出来ません。1978年の国会答弁で、安保条約締結以降、公務中の事件、事故が三万六千件に達しているがアメリカで裁判が行われたのは一件もないということが明らかになりました。公務外の事件、事故の場合には、日本側が裁くことになっていますが、日米に密約があり、特に重大なものでない限り、日本側は裁判権を放棄することになっているとも言います。

16年前に移設が合意されたにも係わらずいっこうに進展しない「普天間基地問題」、沖縄県民が強硬に反対しているにも係わらずオスプレイ配備が強行された問題、米兵犯罪の放置など、日本は一体アメリカの植民地なのかと憤りを感じざるを得ません。