学童保育と「放課後子どもプラン」2007年05月06日 22時23分02秒

今年度から「放課後子どもプラン」が実施されています。国の説明によれば、「原則としてすべての小学校区で、放課後等の子どもたちの安全で健やかな居場所づくりを進め、『放課後子ども教室推進事業』(文部科学省)と『放課後児童健全育成事業』(厚生労働省)を一体的あるいは連携して実施する総合的な放課後対策」であるということです。

一部の新聞では、これにより、学童保育がなくなってしまうかのような報道もなされました。しかし、現段階では、国も県も、「放課後子ども教室推進事業」と「放課後児童健全育成事業(学童保育事業)」のそれぞれの役割を充実させていくことが重要であるという立場を取っています。

前回のブログで書いた「疑義回答」によれば、「できるだけ両事業の実施を検討いただきたいが、いずれかの事業のみの実施となっても差し支えない。」としています。どのように推進するかは、各地域の実情に応じて、各自治体で判断してほしいという立場であるようです。

一部の新聞では、今後はこの二つの事業を合体させ、5時までは「放課後子ども教室推進事業」で全ての児童を預かり、それ以降は学童登録児童を預かるというようになるかのように報道しました。しかし、「疑義回答」によれば、このような形では、放課後児童健全育成事業の補助対象とはならない、つまり学童保育ではないという見解を示しています。

「疑義回答」では、以下のような図を示しながら次のように述べています。

「同じ建物・同じ部屋で両事業を一体的に実施しており、その間に放課後児童クラブの利用児童に対して、生活の場が提供できないなどクラブの機能を満たしていない場合は、実施要項および交付要綱の補助要件を満たしていないので、放課後児童健全育成事業等補助金の対象とならない。」

厚生労働省としては、学童保育は「生活の場」であり、専用施設、専任の指導員がいなければ、学童保育と呼ぶことはできない、ということだろうと思います。この見解によれば、学童機能を有していると言っている江戸川区の「すくすくスクール」なども、学童保育と呼ぶことはできないということになります。

「放課後子どもプラン」推進のために、今後「市町村は、行政、学校、放課後児童クラブ、社会教育、児童福祉、PTAの各関係者及び地域住民等で構成される『運営委員会』を設置し、事業計画、活動プログラムの企画、事後検証・評価等を検討」していくことになっています。

草加市でも、「放課後子どもプラン」推進のための「運営委員会」が設置されます。子どもに関わるさまざまな団体とも協力しながら、子ども達の放課後の生活をより充実させていくという立場から、積極的に参加していきたいと思います。

第4回元気っ子クラブ総会が終わりました。2007年05月26日 15時20分18秒

先週の日曜日、5月20日(日)に、元気っ子クラブの第4回総会が無事終了しました。市長を始め、県議会議員、市議会議員など、多数の方に来賓として出席していただきました。あいさつが終わっても帰らず、議事が終了する最後まで、出席していただいた議員さんもいて、とても嬉しく思いました。

元気っ子クラブによる、市内児童クラブの統一運営が始まって、丸3年が終わり、4年目を迎えています。いろんな課題を抱えつつも、大きな事故や問題もなく、赤字にもならず、なんとか3年間を終えることが出来ました。各父母会やOBを始め、いろんな方々のご協力に、心から感謝いたします。

統一前は、各父母会がそれぞれの学童保育を運営していました。指導員会などを中心として、実務の統一などは図られてきていましたが、保育料も、指導員の賃金もまちまちであり、勤務時間や開設時間なども、学童ごとに微妙に食い違っていました。それぞれに父母会の歴史があり、行事などの取り組みもそれぞれに個性があります。

各父母会や指導員、指導員労組などとも話し合いながら、勤務規定を始めとした様々な統一規定を作成し、バラバラだった賃金を統一するために、何回も試算を行ったり、各父母会への説明に回ったりと、統一開始直前は、本当に目が回るような忙しさでした。14学童の統一運営運営を行うというのは、草加の学童の歴史の中で初めての経験であり、不安と緊張の中でのスタートでした。

1年1年が新しい経験でしたが、この3年間の運営を通して、統一運営をきちんと行うためのさまざまなノウハウも身につけることが出来ました。また、各父母会運営の時には分からなかったけれども、統一運営を行うことによって、見えてきたこともたくさんありました。

しかし、解決しなければならない課題もいくつかあります。

一つは、元気っ子クラブと各父母会どの関係がどうあるべきなのかを、もう一度、みんな考え、確認をしていくということが必要だと思っています。歴史的に見ても、各父母会の活動の中から元気っ子クラブが生まれてきました。また、児童数が急増し、元気っ子クラブが運営する学童数も増えている中で、仕事を持ちながら活動している元気っ子クラブの常任理事、事務局が実務のほとんどを担っていくという活動スタイルでは、限界が来るのは目に見えています。

もう一つは大規模化の問題です。大規模化が急速に進行したことにより、子ども達の保育が大変になっているだけでなく、父母会の運営自身も困難を抱えるようになってきているのではないかと感じています。父母会が大きくなることにより、親どうし、親と指導員との関わりなどが以前よりも薄くなってしまっているのではないかと懸念しています。

全国的に見て、埼玉県の学童保育は、突出して高い水準にあります。その埼玉の中でも、草加の学童保育は、非常に進んだ取り組みを行っていると言ってよいかと思います。(もちろん、様々な問題はかかえているし、まだまだ決して満足する状況ではありませんが。)こうした成果を実現することができたのは、これまで学童保育に関わってきた、多くの先輩方の努力のたまものです。

学童保育のニーズは、これまで以上に高くなってきています。さまざまな課題を解決し、5年先、10年先に、草加の学童がさらに発展し、もっともっと子育てしやすいまちとなることができるかどうか、今年1年間の活動が、極めて重要となっています。5年先、10年先を展望し、その礎となるような活動を行っていきたいと考えています。

指導員の研修について2007年05月26日 15時31分26秒

以下の文は、指導員の学習部ニュース用に書いたものです。

指導員の研修を考えるにあたって、まず改めて学童保育の果たすべき役割をしっかりと見据えることが大切だと思います。言うまでもないことですが、学童保育の果たすべき役割には、次の三つがあります。

①共働きや母子父子家庭の、小学生の放課後の生活を豊に保障する。
②そのことを通して、親の働く権利を保障する。
③学童の活動を通して、親どうしの結びつきを作り出し、共同の子育てを進める。

この三つの役割を果たすためには、子どもを真ん中にして、保護者と指導員が共に手を取り合って活動を進めていくことが大切です。指導員は、日常の保育をおこなうと同時に、学童保育を支え、その団結をより強固なものにしていく要の役割を果たしています。学童とその中での指導員の役割が以上のようなものであるとするならば、当然、これらの役割を十分に果たしていけるような力を身につけていくことが、研修活動の中心でなければなりません。

今年度の元気っ子クラブの総会資料では、保育内容についての保護者の意見(昨年度末に実施した保護者アンケートから)を、以下の6点にまとめてあります。

①指導員がとても熱心であり、また親しみやすく信頼できるということ。
②あたたかで、成長し合える異年齢の集団があるということ。
③家庭では出来ないような遊びや行事があること。
④指導員が一人ひとりの子どもの話をよく聞き、大切にしてくれていること。
⑤働く親の悩みや心配事にも指導員が親身に相談してくれていること。
⑥子ども達自身が喜んで通い、成長していっていること。

①~③のような直接保育の内容に関わる項目については、多くの保護者が意見を書いてくれていました。その一方で、④の「一人ひとりの子どもの話をよく聞き、大切に」するという点に関しては、昨年度等と比べても、保護者の声が減ったように思われます。⑤の「指導員が親身に相談してくれている」という点に関しては、さらに保護者の声が少なくなっています。

④や⑤に関する保護者の声が少なくなっている理由のひとつは、学童の大規模化が急速に進んでいることだと思われます。草加の学童の一施設あたりの児童数は、十年前の1997年には、33.6人でしたが、今年度当初には、なんと69.9人と倍近くに増えてしまっています。家庭に代わる場である学童保育の役割を果たすためには、大変に困難な状況となっています。

また、学童の大規模化は、保護者どうしの顔が見えないなど、父母会活動にも大きな影響を与えています。保護者のアンケートの中では、明らかな誤解や単純な行き違いと思われるような意見も見受けられました。個々の保護者と指導員、保護者どうしの交流などが、以前に比べて薄くなっているのではないかと懸念されます。

大規模学童の分割を求めるなど、具体的な施策の前進を求めていくことが極めて重要です。同時に、大規模化という困難な状況の中でも、一人ひとりの子どもを大切にする保育実践をおこない、一人ひとりの保護者と心を通わせ、よりよい学童を作っていくために共に協力していくということが強く求められています。

一人ひとりの思いをきちんと受け止めるということが、学童における保育実践の基本です。これは、「子どもの最善の利益」(the best interest of the child)の保障をうたった「子どもの権利条約」の精神でもあります。大田尭先生が良く言っていますが、この場合の「子ども」とは、子ども一般ではありません。英語で言えば、the child、つまり、「限定された特定の子ども」、40人いればその個性豊かな40人一人ひとりにとっての「最善の利益」がきちんと保障されなければならないということです。大規模化というたいへんに困難な状況であったとしても、まず、このことを中心に据えて、保育実践、研修を進めていくことが大切だと思います。

同時に、大人数となり、意識も多様化している保護者とどう結びつきを深め、共同の子育てを進めていくのかということについても、知恵を出し合い、研修を深めていくことが必要です。子どもの数が少なく狭い子育て経験しかもっていないため、「我が子主義」とも言うべき、自己中心的な言動を行う保護者もいます。こうした保護者の思いもきちんと受け止めつつ、長い目で保護者を育てていくという視点を持つことも大切です。一人ひとりの保護者の思いに共感する力、自分たちの思いをきちんと伝えるコミュニケーション能力なども求められています。

いま、新しい指導員もたくさん入ってきています。これまでの保育の中で培った自分たちの知識や技能をきちんと次の人たちに伝えていってほしいと思います。お互いが切磋琢磨し、これまで以上に質の高い研修活動を進められることを期待しています。

第4回国際交流フェスティバル 草加国際村一番地2007年05月27日 23時50分18秒

今日は、学童保育の県研究集会が県立大学で開催されていましたが、私は、いろんな付き合いもあり、獨協大学で開催された「第4回国際交流フェスティバル 草加国際村一番地」に参加してきました。市長や山川県議も見えていて、少しお話しをしました。

世界の音楽とダンスの披露、市内の国際交流団体の交流、そして世界15カ国の料理もあり、たっぷり楽しめる企画でした。「ちょっと料理を食べに・・・。」と近くの学童の方も何人か見えていました。

学校でも学童でも、外国籍の子どもが増えてきています。草加は、外国籍の子ども達をサポートするボランティアの方などが、比較的多いとは思いますが、まだまだ全ての子ども達が十分なサポートを受けられているという状態ではありません。「誰もが安心して暮らせるまち」という中には、当然、外国籍の人、日本人だけれども日本語を母語としていない人たちも含まれています。行政の協力も得ながら、こうした行事なども通して、きめ細かなサポートネットを作っていくことが必要だろうと思います。

外国籍児童にとっての漢字学習の困難さ。2007年05月28日 00時02分48秒

前のブログの続きです。

私は、今高校一年生を担任していますが、私のクラスにも、外国籍の生徒が3人います。一人は、日本で生まれ日本で育ったので、学習するうえで全く問題ありませんが、あとの2人は、小学校高学年の時に日本に来ているので、日本語は母語ではありません。もう4~5年日本にいるので、日常会話には全く問題はなく、日本人の生徒と一緒に冗談を言い合ったり、普通に高校生活を過ごしているように見えましたが、実は学習上非常に困難があるということが分かりました。

中間考査が近づいて来たときに、一人が、「先生、ノートの漢字が読めないので、教えてください」と言ってきました。先生が黒板に書くことは、きちんとノートに書いてあるのですが、実は、それは書き写しているだけであって、漢字が読めているわけではありませんでした。各教科のノートを、一緒に確認しましたが、本当に初歩的な漢字でも読めないものがあり、驚きました。読めても、意味がわからないものもありました。

外国籍の子ども達がこれだけ増えてくると、進学ということが大きな問題となります。その時に、ネックとなるのが、日本語、特に漢字です。私たちは、時々間違えながらも、当たり前のように漢字を使っています。外国籍の子どもを担任してみて、漢字の習得ということが、実は本当に大変なことなんだということを実感しました。

上は「うえ」、下は「した」と教えても、上下は「じょうげ」となりますし、上手は「かみて」、下手は「しもて」です。確かにこれでは、混乱してしまいます。先日、国語の試験監督をしていたら、「~を記せ」が読めませんでした。問題文が読めないのでは、解答のしようがありません。「これは『きせ』と読む」と教えたら、「『きせ』ってどういう意味ですか?」と聞かれてしまいました。これでは大変です。

いろんな国の子がいるし、一人ひとり状況も違います。その子その子にあった、きめ細やかなケアがなされなければなりません。「国際化」ということを声高に言っている割に、こうした外国籍児童に対する国や県の対応は、非常にお粗末だと思います。

教職員の熱意とボランティアの人たちの力に頼るしかないというのが現実だろうと思います。縁あって日本にやってきたこの子達が、日本で充実した時が過ごせるように、今後もみんなで協力していければと思います。