いじめと子どもの自殺について2006年12月09日 00時21分12秒

 いじめによる子どもの自殺、文科省への自殺予告などが、この間マスコミで大きく取り上げられていました。いじめなどが原因で尊い命が失われるということは、本当に痛ましいことであり、絶対にあってはならないことです。今日は、この問題について、少し考えてみたいと思います。

 この間、マスコミはセンセーショナルに取り上げていましたが、学校におけるいじめや青少年の自殺は、ここに来て急激に増えたということではありません。

 日本は、1994年に、子どもの権利条約を批准しました。批准国の義務として、その取り組み状況を定期的に国連に報告していますが、1998年に出された、日本に対する国連・子どもの権利委員会の総括所見では、次のように述べています。

 「保健制度が進んでいることおよび乳児死亡率が極めて低いことを考慮に入れながらも、委員会は、子どもの自殺が多数生じており、かつこの現象を防止ために取られた措置が不十分であること、(中略)を懸念する。」

 「識字率が極めて高いことに表れているとおり締約国が教育を重視していることに留意しながらも、委員会は、競争が激しい教育制度のストレスにさらされ、かつその結果として余暇、運動および休息の時間が得られないために子ども達の間で発達障害が生じていることを、(中略)懸念する。委員会はさらに、学校忌避の事例が相当数にのぼることを懸念するものである。」

 「委員会は、学校における暴力が頻繁にかつ高いレベルで生じていること、とくに体罰が広く用いられていることおよび生徒の間で非常に多くのいじめが存在することを、懸念する。(中略)委員会は、現行の措置が学校暴力を防止するためには不十分であることに、懸念とともに留意する。」

 これは、1998年に出された総括所見です。この総括所見の中では、こうした見解を踏まえて、具体的な提案と勧告がなされていました。こうした提案と勧告を受けて、その後、日本政府が改善のための適切な対応を取ったかどうかが問題です。

 この6年後に出された、同委員会の第2回目の総括所見では、以下のように述べています。

 「とくに差別の禁止、学校制度の過度に競争的な性質およびいじめを含む学校での暴力に関する勧告は充分にフォローアップされていない。委員会は、これらの懸念および勧告がこの総括所見においても繰り返されていることに留意するものである。」

 「委員会は、0~18才の全ての子どもを対象とした、条約の全ての領域に関する包括的なデータが存在しないことを懸念するとともに、0~18才の子どもに配分される資源についての情報が存在しないことも遺憾に思うものである。」

 「委員会は以下の点について極めて懸念する。a. 若者の自殺率がますます高くなっていること。b. 自殺および自殺未遂ならびにその原因に関する質的および量的データが存在しないこと。 c. 若者の自殺の問題に対応する主要機関の一つに警察が指定されていること。」

 残念ながら、6年経っても、状況がほとんど改善されていないし、きちんとした対策を考えるために必要な基礎的なデータさえ揃えられていないということです。

 今回のいじめ予告問題などをきっかけとして、全国の小中高校に、文科省大臣名の緊急アピールが配布されました。しかし、こういう文書を出してそれで済むという性格の問題ではありません。何年も前から、国際的にも繰り返し指摘されてきた問題を、この間、子どもの立場に立ってどれだけ真剣に取り組んできたのかが問われているのだと思います。

 子どもの権利条約と言うと、「子どもに権利などを認めるから、子どもがわがままになるんだ!」などと言う人がいますが、これは大きな誤解です。条約というのは、国と国とが約束するものです。子どもに対して、「人をいじめないようにしましょう」とか「しっかり意見表明しましょう」などと義務づけるものではありません。

 国家間の約束ですから、批准した国はその条約の実行に法的な責任を負います。子どもの権利条約を批准したということは、「子どもの最善の利益」を守り、一人ひとりの子どもが本当に大切にされるような社会をちゃんと作りますということを、国際的に公約したということです。

 そういう社会をきちんと作ってこられたかどうかという、私たち大人の責任が、いま問われているのだと思います。

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