フィンランドの教育に学ぶ ― 2006年12月24日 23時58分53秒
今日は、最近読んだ本の紹介です。
「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」(福田誠治著 朝日出版)という本です。
フィンランドという国は、教育関係者にとって、ここ何年か非常に注目されている国です。それは、OECDが行った学力調査において、2回連続、世界でトップレベルの成績を修めたからです。
日本では、「ゆとり教育は学力低下を招いた」とか「子ども達をもっと競わせなければならない」というような声をよく聞きますが、国際的な最新の調査結果からみると、全く根拠のない見当はずれの論であるということが分かります。
教育関係者だけでなく、小中学生をもつ、保護者の方にも是非とも読んでもらいたい本です。私の家の近くのタケシマ書店にも、平積みされていましたので(目立たないところではありましたが)、比較的手に入れやすい本ではないかと思います。
フィンランドは、2000年に行った第1回調査では、総合読解力で1位、科学的リテラシーで3位、数学的リテラシーで4位でした。2003年に行った第2回調査では、読解力と科学的リテラシーで1位、数学的リテラシーで2位、問題解決能力で3位というすばらしい成績を修めました。
日本は、2000年の調査では、数学的リテラシーで1位、科学的リテラシーで2位、総合読解力で8位でした。20003年調査では、科学的リテラシーで2位、問題解決能力で4位でしたが、前回1位だった数学的リテラシーが6位、読解力は14位と大きく後退しました。
この調査結果を受けて、当時の中山文部科学大臣は「日本の学力が低下傾向にあるということをはっきり認識すべきだ」と危機感を表明し、全国学力テストの実施にふれながら、「低下傾向に歯止めをかけなければならず、競い合う教育をしなければならない」と述べました。
フィンランドが引き続きトップの成績を修めたのは、決して「競い合う教育」を行ったからではありません。日本の教育行政のトップが、調査結果をきちんと見ずに、こういう思いつき的なことを言っているから、日本の教育は良くならないのだとつくづく思ってしまいます。
調査結果を見れば分かることですが、今回の日本の「学力低下」は、トップレベルの子ども達の学力が落ちたということではなく、習熟度が低いレベルの子ども達が増えたことによって生じています。つまり、トップレベルの子ども達の比率はそれほど変わらないけれども、中位レベルにいた子ども達が大きく低位レベルに移行し、全体の平均を下げたということです。
簡単に言えば、学力の二極分化が進んだことによって平均点が下がり、ランクを落としたということです。したがって、まず必要なことは、何らかの理由で低位に落ちてしまった子どもたちに対して、きめ細かな対策をとり、引き上げていくということです。現状の中で、「競い合う教育」をさらに推し進めれば、より一層悲惨な結果となるのは火を見るよりも明らかです。
逆に、フィンランドでは、低位レベルの子どもが非常に少ないのが特徴です。2003年調査の読解力を見てみると、レベル1以下という子どもは、5.7%しかいません。日本は、レベル1以下の子どもは19%、実に5人に1人という数字です。トップのレベル5でも、日本が9.7%なのに対し、フィンランドは14.7%となっています。
フィンランドでは、できる子とできない子の学力差が非常に小さいというのが特徴です。学校間格差も非常に小さくなっています。さらに言えば、家庭の経済的、文化的な違いによる影響もそれほど大きくはなっていません。
決して、「競い合う教育」を徹底したことが、フィンランドの好結果を生み出したのではありません。逆に、「親の経済力など本人の責任ではない条件で教育上の格差が生まれてはならない」「一人も落ちこぼれを出さない」という考えのもとに、一人一人を大切にする教育を徹底していることが、こうした結果をもたらしたのではないかと考えざるを得ません。
「高学力」を保障するためにも、実は、一人一人を大切にし、徹底して「平等」を追求しなければならないということをフィンランドの結果は示していると思います。「競争」ではなく、共に学び合い、分かり合うという「協同」の教育こそが強調されなければならないと思います。そして、それを実現するための条件の整備ときめ細やかな手だてを講じていくことが必要となっています。
この本の中では、具体的にどんな授業をやっているのかということも書かれています。クラスサイズも違うし、やり方が全然違うので、いちがいに比較はできませんが、日本の授業のイメージとは、かなり違います。日本の教育は、形を重視し、どうしても子どもを管理しがちだなあと、あらためて感じました。日本では、子どもだけでなく、学校や教員に対する管理もさらに強まってきていまが・・・。
もし興味を持たれた方は、是非読んでみてください。

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