総選挙-各党の子育て政策の比較から2009年08月16日 11時38分58秒

今後の日本のあり方を決定する総選挙があさって18日に公示され、30日に投票となります。子育てに関して各政党がどのような公約を掲げているのか、まとめたものがないかとネットを検索してみました。

「Yahooみんなの政治」の「マニフェスト点検『子育て』」で、各党の子育てにかかわる政策を比較した記事が載っていました。出典は読売新聞8月2日付の記事です。各政党がどのようなことを言っているのかということを知ってもらうために、以下に記事を転載した上で、私の考えを述べていきたいと思います。


◆自民「幼児教育を無償化」◆

自民党が打ち出した幼児教育の無償化は、幼稚園や保育園に通う3~5歳児の家庭の費用負担を、2010年度から段階的に軽減し、3年目の12年度から無償とするものだ。

現在、認可保育園の場合、親の所得や子どもの年齢によって各自治体が保育料を定めており、国の徴収基準では月額0~8万円。幼稚園の保育料(入園料含む)は、全国平均(08年度)で、公立が年額7万8000円、私立が同29万9000円となっている。

◆民主「中学まで月2万6000円」◆

民主党が「最も重要な政策」(直嶋正行政調会長)と位置づける「子ども手当」は、中学卒業まで、1人あたり月額2万6000円(年額31万2000円)を支給するとしている。初年度の10年度は半額、11年度からは全額を支給する。

現行の児童手当支給対象は小学6年生まで。支給額は、3歳未満が月額1万円、3歳以上は同5000円(第3子以降は同1万円)。所得制限があり、総児童数に対する支給対象児童数の割合は86%(06年度)だ。


自民党の掲げる幼児教育の無償化には年8000億円近く、民主党の子ども手当の給付には、年5・3兆円の費用が新たに必要になると見込まれる。

また、認可保育園への入所を申し込みながら、満員で入れない「待機児童」は、全国で4万184人(08年10月現在)。自民党は「(政府が実施中の)新待機児童ゼロ作戦などによる保育サービスの集中整備」、民主党は「空き教室などの活用で保育所を増やし、待機児童解消を目指す」ことを公約に盛り込んでいる。


◆公明「中3まで児童手当」◆

公明党は、就学前3年間の幼稚園や保育園などの教育費を無料にする「幼児教育無償化」を盛り込んだ。自民党との与党共通公約としてアピールする。

また、児童手当の支給対象を現行の「小学6年まで」から「中学3年まで」に拡大。次の段階として、3歳以上についての現行の支給額を倍増し、月額第1子1万円、第2子1万円、第3子以降2万円とする。

妊婦検診の完全無料化、出産育児一時金の引き上げ、保育園の待機児童解消や児童の放課後対策も掲げる。


◆共産「医療費無料化確立」◆

共産党は、子供の医療費の無料化を国の制度として確立することを訴える。また、児童手当を倍の1万円にし、18歳までの支給を目指す。その際、扶養控除、配偶者控除廃止などは行わないとしている。

生活保護の母子加算復活、児童扶養手当の父子家庭への支給なども明示した。保育園待機児童ゼロを目指し、学童保育に希望者全員が入れるよう抜本的な拡充を図る。


◆社民「18歳まで月1万円」◆

社民党が打ち出している「子ども手当」は、18歳までの子供1人当たり月1万円、第3子以降は2万円。また、中学卒業までの子供の医療費無料化を目指す。

良質な保育や学童保育を増やし、子供の育ちの場を保障。保育料の無料化を進める。生活保護の母子加算の復活、児童扶養手当の父子家庭への支給なども盛り込んだ。


◆国民新党「仕送り減税」◆

国民新党は、「仕送り減税」を創設し、自宅外通学者を抱える家庭を経済的に支援する。


◆改革ク「子育て世帯減税など」◆

改革クラブは、不妊治療の負担軽減、子育て世帯への減税、子供を守るための防犯対策などを掲げた。


◆新党日本「教育費用の負担軽減」◆

新党日本は、教育費用の個人負担軽減などを進める。



以上が各政党の子育てにかかわる政策をまとめた記事の内容です。自民と民主がメインとなっており、少数政党になるほど扱いが小さくなっていますが、マスコミの取り扱いとしては、やむを得ないところかもしれません。

一通り目を通してみて感じるのが、「どの政党もまあ良いことを言っている。」ということでしょうか。少子高齢化が大問題となっているこのご時世で、ある意味当然のことかもしれませんが、これではなかなか違いが見えてきません。マニフェストということがもてはやされていますが、個々の政策の比較だけでは、本当の政治のあり方というものはなかなかはっきりとは見えてこないのではないかという気がします。

各政党が基本的にどのような政治哲学を持っているのかということ、そして、その哲学に基づいてどのように財源を確保しようとしているのかということがとても重要なのではないかと思います。長くなりましたので、私の考えは、次回で述べたいと思います。

総選挙で重視したいこと その①「誰に目を向けて政治をしようとしているのか?」2009年08月16日 22時12分22秒

前のブログの続きですが、まず最初に、家族や教育、子育てに対して、日本がどれくらい力を入れているのか、国際的にどういう位置にいるのかということを見ていきたいと思います。そのために、いくつかの数字を紹介します。出典は、全てOECDの調査です。(①は、"Social Expenditure Database"から、②と③は、"Education at a Glance 2008"から、④は"Society at Glance 2009"からのものです。)

項目日本日本の順位OECD平均フランスイギリスアメリカ
①家庭に対する公的支出(GDP比)0.8%26位/29カ国2.0%3.0%3.2%0.6%
②学校教育に対する公的支出(一般政府総支出比)9.5%29位/30カ国13.2%10.6%11.9%13.7%
③就学前教育に対する公的支出(GDP比)0.09%25位/27カ国0.36%0.65%0.28%0.30%
④子どもの貧困率13.7%19位/30カ国12.6%7.6%10.1%20.6%

①は、社会保障の中で、特に「家庭」に対してどれほどの公的支援が行われているのかということです。②の中で言う「学校教育」は、初等教育から高等教育-日本で言えば小学校から大学(院)まで-を含んだものです。③の「就学前教育」の対象は、3歳以上児です。④の「貧困率」は、「相対貧困率」のことです。

ここに示した数字は、ほんの一例です。どの数値を見ても、OECD諸国の中で下位レベルです。①から③については、最下位レベルと言ってよいでしょう。日本(の政治)が、これまで、いかに家族や教育、子育てに対して、力を注いでこなかったのかということが非常によく分かると思います。

こうした影響を最も受けているのが一人親世帯です。子どものいる一人親世帯の貧困率は、日本の場合、親が就労している場合であっても58.4%にもなっています。OECD平均が21.2%、次に悪いルクセンブルグが38.3%です。30カ国中、断トツで最悪の数字です。きちんと就労しているにもかかわらず、一人親世帯の6割近くが「貧困」家庭であるという日本は、本当に「先進国」の名に値するのでしょうか。「先進国首脳会議」(現在はロシアが加わったため「主要国首脳会議」と呼ばれている)のメンバーであった日本ですが、こうした数字を見てみると、日本は、本当の意味で「先進国」なのかと疑問になります。

他の国と比べて、日本にお金がなかったわけでありません。これらのOECD調査で示された数字は、GDPや政府総支出の中での割合です。つまり、限られた予算の中で、多くのOECD諸国が当然のこととして割り当てていたお金を、日本では使ってこなかった、つまり、他のことに使ってきていたというわけです。では、何にお金を使ってきたのか?そのことを詳しく述べることは出来ませんが、少なくとも言えることは、弱い立場にいる人-子どもや一人親世帯の家庭など-に目を向けた政治ではなかったということです。

今回の総選挙にあたって、私が最も重視したいのは、それぞれの政党がどういう立場で、誰に目を向けて政治を行おうとしているのか、誰の声を代弁して政治を行おうとしているのかということです。その政党の基本的な姿勢、ポリシーの問題です。

今回の総選挙は、政権交代があるのかないのかということだけが争点ではないと思います。一人ひとりの国民の命とくらしを大切にし、すでに多くの「先進国」で当たり前に行われている政策がきちんと行われ、本当の意味で「先進国」と言われる日本を作っていくことが出来るのかどうかが問われているのだと思います。