厳しい高校生の就職戦線 NHKの取材を受けました2009年09月10日 21時27分10秒

明日(9/11)、厚生労働省が高校生の求人状況等についてのデータを発表するそうです。それに関連して、現場の状況を放送したいということで、今日、NHKが私の勤務する高校に取材にきました。

昨年のリーマンショック以来、百年に一度と言われている不況の中で、高校生の就職状況も大変な状況となっています。明日発表されるデータも、それを裏付けるものと思われます。埼玉県内で見ると、今年度の高校生の求人件数は、昨年度に比べて4割以上減っています。

NHKの取材の趣旨は、こうした厳しい状況の中で真剣に就職活動に取り組んでいる生徒や学校現場を報道することで、社会全体で、この問題を考える必要があるのではないかということを伝えたいということでした。

午後1時頃来校し、5時過ぎまで撮影、取材を行いました。今日撮影、取材した内容は、数分間に編集し、明日(9/11)、6時からの「首都圏ネット」か7時からの「ニュース7」か9時からの「ニュースウォッチ9」で放送される予定だということです。

もしお時間がありましたら、ちょっと明日夕方以降のニュースに注目して下さい。(私は出演しませんが。)

今こそ「子どもにやさしいまちづくり」を!2009年09月11日 23時29分55秒

以下の文は、「元気っ子ニュース9月号」の原稿として書いたものですが、ここに転載します。



総選挙が終わり、政権交代が現実のものとなりました。自公政権から民主党政権に変わり、これまでよりも子育てや子どもにやさしい政策が推進されるのかどうか、注目していきたいと思います。

 

さて、今日の社会は、少子化や高齢化といった問題だけでなく、「派遣村」や「貧困」問題に象徴される雇用や暮らしの問題、安心して生活が営めるのかという問題など、実に多くの課題を抱えています。こうした時代だからこそ、いま「子どもにやさしいまちづくり」という考え方が非常に重要になってきているのではないかと思います。

いろんなところで「子どもにやさしいまち」どいう言葉が使われていますが、もともとは、1990年代の初めからユネスコが提唱してきた"Child Friendly City"という考え方に端を発しているものと思われます。2002年の国連、子どもの特別総会では、「子どもにふさわしい世界」(A World Fit for Children)の創造ということが謳われました。

「子どもにやさしいまち」は、大人にとっても、お年寄りにとっても、女性にとっても、障害を持っている人にとっても、「やさしいまち」だろうと思います。つまり、「子どもにやさしいまち」を目指すことは、結果として、「みんなにやさしまち」を作っていくことにつながるのではないかと思います。

ユニセフは、「子どもにやさしいまち」を実現していくということは、そのまちにおいて「子どもの権利条約」に基づくまちづくりを進めるということと同じ意味であるとしています。「子どもの権利条約」は、1989年に国連において採択された国際条約です。日本は、1994年に批准しています。

批准とは、「その条約を認めて実行します」ということを、正式に意思表明するということですから、日本政府は、この「子どもの権利条約」を国内法と同じ位置づけを持って、誠実に実行する義務を負っています。しかし、残念ながら、これまで国は「子どもの権利条約」に基づく施策については、あまり熱心ではありません。国があまり熱心ではないという状況だからこそ、子どもが実際に暮らしている身近な自治体において、「子どもにやさしいまちづくり」を進めていくことが、特別な意味を持っているのだと思います。

ユニセフは、子どもの権利には、①差別の禁止、②子どもの最善の利益の確保、③生命・生存・発達の権利、④子どもの意見表明とその尊重という4つの一般原則があるとしています。この中で、一番大切だと思うのが、②の「子どもの最善の利益の確保」です。

日本語では、「子どもの最善の利益」と訳されていますが、原文では、"the best interest of the child"となっています。定冠詞の"the"が使われていることに注意してください。一般的、抽象的に子どもを大切にしようと言っているのではなく、目の前にいる特定の一人ひとりの子どもにとって、何が一番大切なのかを考えなければならないと言っているのです。お金があろうがなかろうが、医療が必要な子どもには適切な医療を、「放課後の生活の場」が必要な子どもには、きちんと学童保育を提供していくということ。置かれている状況が違う一人ひとりの子ども、それぞれにとって何が必要かを考えていくことが重要だということです。

草加市では、私も参加している「みんなのまち草の根ネットの会」が、2007年1月に草加市自治基本条例に基づく「みんなでまちづくり会議」に、「子どもにやさしいまちづくりをすすめるために、草加市に子どもの権利に関する条例を制定することについて、市、市民による検討委員会等を設置し検討を始めること」を提案しました。その時、草加市はこの提案に対して、「『子どもにやさしいまちづくり』を進めるため、条例等の必要性なども含め幅広く検討する場を設けていきたい。」という前向きな回答を行いました。しかし、残念ながら、その後ほとんど具体的な進展はありませんでした。年度ごとの計画も示し、本来ならば、今年度には実際に「検討委員会を立ち上げ、条例制定について検討する」ということになっていましたが、まだまだそういう段階には至っていません。

年度ごとの計画も示して、極めて前向きな回答を行ったにもかかわらず、なぜ進展がなかったのでしょうか。考えてみるに、相変わらずの「縦割り行政」の問題、行政内部での意思疎通の問題、「みんなでまちづくり会議」の意味・意義についての市職員の理解不足という問題などがあると思われます。

ユニセフは、「子どもにやさしいまち」とは何かということに関して、9つの条件を示しています。その中に、「子どもの権利条約に根ざした総合的な施策・行動計画があること」「これを推進する特別な行政体制が整えられていること」という項目があります。草加市では、「子ども未来部」という部署は作られましたが、実際には、個々の事業ごとに担当する課が分かれており、「総合的な施策・行動計画」を「推進する特別な行政体制」があるとはとうてい言えません。草加市には、「子どもの権利条約」の視点に立って総合的な観点から、「子どもにやさしいまちづくり」を強力に推し進めていくという体制が整っていないということ、このことが、「子どもにやさしいまちづくり」を進めていく上でも、あるいはさまざまな子育て施策を大きく前進させていく上でも、大きな障害となっていると思わざるを得ません。

草加市が本当に子どもにとってやさしいまちとなるように、子育てに関わる様々な団体や個人の方々と協力して、今後も取り組んでいきたいと思います。

母子加算の復活と貧困問題2009年09月20日 23時41分36秒

今日のニュースによれば、長妻厚生労働相は、障害者のサービス利用に原則1割の自己負担を課し、評判の悪かった「障害者自立支援法」を廃止し、新制度の設計に着手するという考えを示しました。その一方で、「生活保護の母子加算は、自治体の準備態勢などの課題をクリアできず、復活時期の結論を連休明けに持ち越した」(産経新聞より)と報じられていました。

私が勤務している高校でも、生活保護を受けている生徒が何人かいますが、話を聞くとみんな本当に大変そうです。特に、一人親の母子家庭の場合には、正規の仕事に就くことが難しく、家事もしながら一生懸命働いているにもかかわらず、余裕のある生活をすることが極めて困難な状況にあります。

こういう家庭の話を聞いていると、そもそも何で母子加算を削減してしまったのか、そして、復活をするのが何でこんなに難しいのかと首をかしげてしまいます。

生活保護の理念としては、憲法25条で定められている「健康的で文化的な最低限度の生活」を保障する制度として考えられているものだと思います。問題は、その「最低限度の生活」というものをどう考えるかということになります。

生活保護基準の考え方、その算定方式については、いろいろ変遷があるようですが、現在は「水準均衡方式」というものが使われているのだそうです。わかりやすく言えば、「一般国民の生活水準との均衡を図る」ということです。母子加算と老齢加算が廃止された理由は、生活保護を受けていない一般低所得高齢者世帯、母子世帯と比べて、生活保護を受けている同類世帯の基準の方が高いとされ、その「均衡を図る」ためということでした。

ちょっと考えればすぐに分かりますが、この「水準均衡方式」の考え方だと、バブルの時代のように「一般国民の生活水準」がどんどん上がっている時代であるならば、それに伴って生活保護基準もあがります。しかし、現在のように、働いても働いても貧しいというワーキングプアが多数生まれているような時代にあっては、生活保護を受けていない世帯の収入もどんどん下がっています。そうすると、必然的に、生活保護基準も下がるということになります。

この間テレビに出ていた厚生労働省のお役人は、「この間のいろいろな経緯もあり,簡単に母子加算を復活させるということはできない」というようなことを言っていました。確かに、現在の「水準均衡方式」を前提とするならば、「一般国民」の所得自体が下がっているのだから、それに合わせて生活保護基準を引き下げるということは、極めて理にかなったことなのでしょう。しかし、それでは、生活していけないという人がたくさんいるわけです。前提としている考え方事態が間違っているのではないかという、発想はないのでしょうか?

母子加算の復活ということは、直ちにやってほしいと思います。同時に、生活保護を受けていない低所得者世帯に対しても、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障できるような、制度を作っていく必要があるのではないかと思います。「貧困」問題を真っ正面からとらえ、その解決のために全力を尽くしていくということが、今政治に求められています。

今3年生を担任していて、いろんな生徒と進路のことや将来のことを話します。ある生徒は、「とにかく、お金のことで言い合いをしなくてもいい家庭を作りたい」、そんなことを話していました。専門学校の推薦基準に達するために,1学期必死で頑張って、なんとか推薦基準に達したものの、お金の用意ができそうもなく、進学を諦めなければならないという生徒もいます。お父さんが失業し、寮から出て行かなくてはならず、住む家さえもままならないという生徒もいます。そういう中でも、みんな将来のことを考え、本当に一生懸命にがんばっています。

こうしてけなげにがんばっている高校生達が、その夢を実現できる社会であってほしいとつくづく思います。