「全児童」と学童保育2007年01月27日 23時06分31秒

 先週の日曜日(21日)、埼玉県学童保育連絡協議会主催の「よりよい学童保育づくりのための一日学習会」に参加してきました。この学習会は、以前は、指導員の「労働条件学習会」として行われていたものですが、数年前から、上記の名称に変わっています。労働条件だけに限らず、もっと幅広くより良い学童保育づくりのために学習していこうという趣旨で変更されたものだと思います。

 今年のテーマは、「『放課後子どもプラン』『全児童対策事業』との関わりで、改めて、学童保育の役割、指導員の仕事・役割を考えよう!」というものでした。

 午前中は、品川区の下浦忠治さんの講演でした。品川区では、現在、全児童対策事業である「すまいるスクール」に、学童保育は統合されてしまっています。下浦さんは、学童関係者なら誰でも知っているくらい有名なベテランの学童指導員でしたが、現在は、「すまいるスクール」で働いています。

 自分の思う仕事が出来ないという悔しさを持ちつつも、そこであきらめてしまうのではなく、子ども達のためにできる限りのことをしていこうと奮闘されている姿がとても印象的でした。また、全児童対策事業が、学童保育といかに違うのかということが、具体的に良く分かり、大変参考になりました。

 学童保育の場合には、一人ひとりの思いに寄り添い、深くていねいに関わっていくということが大切だとされています。しかし、「全児童」では、とにもかくにも「安全に!」ということが強調され、広く、浅くというスタンスとなります。気になる子どもに関わり、その子と遊んだりしているということは、「良くないこと」とされてしまうと言います。つまり、特定の子どもと遊んでいることによって、他の子に注意が行かなくなってしまうから、子どもと遊んではいけないというのです。とにかく、「全体を見て、ケガをしないように安全に」ということが最優先だと言います。

 また、間口が広がることにより、親の意識も変わってしまうと言います。草加で言う父母会の活動はなく、小学校の保護者会のような会が年何回かあるだけだそうです。380人の登録児童がいるにも関わらず、保護者会の出席は、20人~30人程度、個人面談を呼びかけても、応じたのは、27名だけだったそうです。

 こうした中でも、下浦さんは、通信を書いたり、非常勤の人にも協力してもらい、子ども達の様子で気の付いたことがあったら、出欠カードに記入するという方法などで、家庭への連絡とろうと努力していますが、なかなか顔の見える関係にはならないと言います。

 全児童対策事業と学童保育は、全く性格の違う事業であり、絶対に一体化することはできないということを、引き続き声を大にして言っていかなければならないと思います。

子どもの権利に関する条例の制定を2007年01月29日 23時52分05秒

 私は、現在、「みんなのまち草の根ネットの会」の「子育てパーシャル」というところに所属し、「子どもの権利条約」についての調査や学習の活動を行っています。2005年度には、市内の小中高校生と大人を対象とした「子どもの権利についてのアンケート調査(回答数2,421人)や大田尭先生、荒牧重人先生の講演会などを行ってきました。

 今、この「子育てパーシャル」では、「子どもにやさしいまちづくりを市と市民が協働で進めるため、草加市に子どもの権利に関する条例を制定すること」を、一つの目標として活動しています。

 先日25日に開催された、草加市みんなでまちづくり自治基本条例に基づく、「みんなでまちづくり会議」において、「子どもの権利に関する条例を制定することについて、市、市民による検討委員会等を設置し検討を始めること」を提案しました。この会議には、関係する行政担当者(人権共生課、教育委員会指導課・青少年課、子育て支援課)も参加しました。次回の会議は、4月に開催されますが、その際に、今回の提案に対する行政側の返答がなされます。条例制定に向けて、一歩でも前進できればと期待しているところです。

 いじめや自殺、子どもが犠牲になる痛ましい事件が多発しています。こうした中で、子どもの最善の利益を守るという子どもの権利条約の精神が極めて重要になってきているのではないかと思います。

 いじめによる自殺が相次いだことで、文科省は、慌てていろいろな調査を行ったりしています。しかし、以前にも書いたように、日本において、いじめや自殺が極めて深刻な問題であるにもかかわらず、その実態についてのきちんとしたデータがないということは、すでに、1998年に出された国連児童の権利委員会の勧告の中でも指摘されていたことです。

 2004年の第2回目の勧告においても、「しかしながら、特に、差別の禁止、学校制度の過度に競争的な性格、そしていじめを含む学校での暴力に関する勧告については、十分なフォローアップが行われなかった」として再度の指摘を受けています。

 子どもの権利委員会で指摘されたさまざまな点について、真摯に耳を傾けることなく、きちんと対応してこなかったということが、今日子ども達を取り巻く状況をより一層困難なものにしていると言わざるをえません。

 「子どもの権利」ということについては、いろんな意見があるかもしれません。とにかく、子ども達のことを第一にして、大人が真剣に話し合っていくことが必要なのではないかと思います。条例制定に向けた検討委員会の設置という今回の提案が、こうした真剣な論議を進めるためのきっかけとなれば嬉しいと思います。