「自分の思い、考えをきちんと相手に伝える」という「言語力」とFIFAワールドカップ ― 2010年07月01日 22時45分03秒
今日、本業の高校で、総合学習の時間を使って「言語力」の問題について学習しました。
家族との会話や人と人との関わりが少なくなっていること、ケータイメールの普及などによりきちんと考えをまとめ、文章を推敲して書くということが少なくなってきていることなどから、「情報を整理し、考えを組み立て、根拠をきちんと示して説明する」という「言語力」が非常に弱くなってきているのではないかと思います。
高校の現場でも、本当につまらないことで同じクラスの生徒同士がけんかしたり、逆に、気が合わない生徒とは最初から関わろうとしないというようなことがよくあります。これも、「言語力」の低下ということが深く関わっているのではないかと思っています。一つのクラスの中には、性格も生育歴も違う生徒が集まっているわけですから、「一言」言っただけで「自分の思い」が相手に伝わるなどということはあり得ません。にもかかわらず、「なぜ自分の気持ちを分かってくれないのか」と憤ってみたり、逆に、舌っ足らずの「一言」を言って相手を傷つけてトラブルになってしまうこともあります。
こうしたことから、「言語力」の問題について学習することにしました。主な教材としては、昨年12月に放送された、NHKクローズアップ現代「"言語力"があぶない 衰える 話す書く力」を使いました。
この番組の中で、「言語力」の重要性ということに関連して、FIFAワールドカップのことを取り上げていました。「言語力」と「サッカーのワールドカップ」に何の関係があるのかと不思議に思う人も多いかと思います。しかし、実は重要な関係がありました。
今年のFIFAワールドカップでは、日本チームが大活躍しました。しかし、前回の2006年ドイツ大会では、予選トーナメントで一勝もできずに惨敗でした。日本サッカー協会では、その敗因を分析した詳細なレポートを作成しました。そこで指摘されていたのが、「試合中、相手に自分の考えを伝える能力の不足」ということでした。その克服のために、日本サッカー協会が力を入れてきたのが「言語力」育成ということでした。「言語力」教育の中心となっているサッカー協会役員の方は、次のように述べています。
なぜ自分はドリブルをしたのか。自分がドリブルして抜けば、すぐシュートが打てるからとか、一つひとつのプレーには理由がある。その理由を持ちながらプレーをするのがサッカーである。それを考えないで、判断しないでプレーをする習慣を付けてしまってはダメ。そうならないためにも、自分の意志をしっかりと言葉で相手に伝えるということを意識的にやっていくことが大切。自分はどんなプレーをしたいのか、仲間にどうして欲しいのか、自分で考え、それを言葉できちんと相手に伝える能力が求められている。
日本サッカー協会では、将来の日本を担う中高生を対象に、サッカーの練習だけでなく、学校での国語の授業のように、自分の考えを整理しきちんと言葉で相手に伝えるという「言語力教育」に取り組んできています。今回の活躍の背景には、こうした地道な取り組みがあるのかもしれません。
この番組のゲストである鳥飼久美子さんは、「言葉はスキル(技術)であると思っている人も多いが、そうではない。言葉は人間そのもの、人間の思想の根幹である。人間を作っている一番大事なものが思想であり、それを作っているのが言葉である。言葉の重要性についての認識が少し薄いのではないか。」と述べていました。
人間関係が希薄となっている今の日本社会では、「言わなくてもわかってくれるだろう」ということは通用しないと思った方が良いのではないかと思います。子どもに対してもそうです。親や教師は、「何でこんなことが分からないの!」と頭ごなしに叱ったりしがちです。しかし、親や教師の方が、子どもにも分かるようにきちんとていねいにわかりやすく説明していないという場合も多いのではないかと思います。教師や指導員と保護者が、お互いの「思い」を理解せずにトラブルになることもあります。また、新しい指導員や保護者がたくさん増えている中では、指導員同士、保護者同士の間においても、お互いの気持ちがうまく通じ合わないということもあります。
今の日本社会の中では、「わかっているはず」とか「いちいち説明しなくても私の気持ちをわかって」ということでは、本当の意味でお互いを理解し合うということはできないのではないかと思います。大切なのは、どんな場面でも、「自分の思いや考えを相手にわかりやすく言葉でしっかりとていねいに伝える」努力をすることだと思います。私たち自身も「言語力」を高めるために、日々努力を重ねていきたいものだと思います。

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