本の紹介-「発達が気になる子のサポート入門-発達障害はオリジナル発達」2010年03月26日 20時59分23秒

今回も本の紹介です。

「発達が気になる子のサポート入門-発達障害はオリジナル発達」(学研新書 阿部利彦著)

先日、北千住駅の中にある本屋さんにぶらっと入って、偶然手にした本ですが、とても良い本でした。著者の阿部さんは、所沢市で教育相談をやっている方だそうです。

発達障害を持っている子どもに対してだけでなく、子どもの能力を引き出すために、親や教育者、指導員などが、具体的にどのように子ども達に関わっていけばいいのかということが非常にわかりやすく書いてあります。

こんな風に書くと、単なるハウツーもののように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。本の内容が分かりやすく、なおかつ具体的に実践に役立つものであるのは、著者が実際に多くの子ども達に接しており、その体験に基づいて書いてあるということ、そして、そうした体験に裏打ちされた子どもとその発達に対する確かな目を持っているからだろうと思います。

実際に本を読んで頂ければと思いますが、その内容のごく一部を紹介します。



「私のがんばりに誰かが気づいてくれますように」これは、中学校に進学してから不登校になってしまったイズミさんが書いた切なる願いです。発達障害のある子の多くが、このような気持ちで毎日を過ごしているのです。彼らの「努力」や「成長」は、他の子と比べると小さなものかもしれません。それでも、その変化を見逃さず、「君のチャレンジを見守っているよ」「あなたのがんばりに私たちは気づいているよ」と認めること、そのようなまなざしを向けている大人がいることを彼らに伝えること、それが「ほめる」目的です。さらには、「あなたがあなたらしく、一歩一歩進んでいてくれてありがとう」と大人が感謝することが、子ども達の厳しい生き方を支えることにつながっていくのだと私は考えています。



ところが、実際はまわりの大人はたくさんほめているのだけれど、その思いが当人には全く届いていない場合があると指摘して、次のように書いています。



そんなときには、ほめ方を見つめ直してみましょう。大人が望む行動をしたときだけを認めてほめてしまうと、結果的にその子は大人が思い通りにコントロールするためにほめられたことになり、ほめられてうれしいという気持ちになりにくいのです。なぜなら、子どもは「ほめてほしいときにほめられる」ことで、心にしみる経験となるからです。大人に都合の良い行いをしたときにだけほめるのではなく、その子が自分でがんばったなと思えた瞬間、少しでも成果が上がった瞬間をとらえて、すかさずほめてあげたいものです。



なかなかに奥深い文章です。「その子が自分でがんばったと思えた瞬間」を、的確にとらえ「すかさずほめる」ということは、実はものすごく難しいことです。どれだけその子どもを丸ごととらえられているのか、どれだけ深く関われているのかということが問われてきます。

自分自身の子どもとの関わりを改めて深く考えさせてくれた本でした。