「日本でいちばん大切にしたい会社」を読んで2009年04月11日 21時44分23秒

先日のブログで、「週間ダイアモンド」に載っていた「貧困」を読み解く16冊の推薦図書を紹介しました。その中で、まだ読んでいなかった本を2冊ネットで注文しました。今回、その中の1冊「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司著 あさ出版)を紹介します。

この本を読んで一番考えさせられたのは、「企業は何のために存在しているのか?」「私たちが働くことの意味とは何か?」ということです。「株式会社は、株主のために存在している」とか、「企業は利潤を上げることが一番の目的である」というように言われることがありますが、こうしたことは間違いであると著者は言います。

「企業は何のために存在しているのか」という問いに対して、著者は、次の「5人に対する使命と責任がある」のだと言います。

  1. 社員とその家族を幸せにする。
  2. 外注先・下請け企業の社員を幸せにする。
  3. 顧客を幸せにする。
  4. 地域社会を幸せにし、活性化させる。
  5. 自然に生まれる株主の幸せ。

考えてみれば当たり前な話です。そこで働き、商品を作ったりサービスを提供している社員(下請け企業の社員も含めて)自身が、自分たちが作っている商品、提供しているサービスに誇りとやりがいを持って、生き生きと働いているのでなければ、よい商品やサービスができるはずがありません。社員の働きがいということの中には、当然労働条件や給料ということもあるでしょうが、それだけではありません。自分たちが作っている商品、提供しているサービスが世の中の人のために役立っている、社会的な価値があると感じられるということも大切なことです。

社員一人ひとりがそういう思いで作った商品、サービスであれば、当然お客さんにも支持されるでしょう。世の中のため人のために役立つ商品ということを考えるのであれば、当然、その企業が存在している地域への貢献、地域社会、地域住民に対する使命と責任ということも生まれてきます。こういうことを前提として、そして、その結果として、株主への貢献ということが生まれます。決してこの逆ではないのです。

元気っ子に置き換えて考えるならば、まず、私たちが大切にしなければならないのは、指導員さんが、やりがいを持って働き続けられるような環境を作るということだと、改めて感じました。もちろん、子どもが真ん中であることに変わりはありませんが、指導員さんが生き生きと働けないようでは、よい保育ができるわけがありません。学童にとって、指導員が要(かなめ)であるということを、もっと強調していかなくてはいけないと感じました。

世の中、お金儲けのことばかり考えている企業、お金儲けのために平気で不正をする企業もありますが、そういう生き方とは全く逆に、働く人の幸せを考え、世のため人のために役立つことを真剣に考えて、企業を経営している方もいらっしゃいます。この本では、著者が企業訪問を行った6000社の中から選んだ、とっておきの会社、私たちが「日本で一番大切にしたい会社」を5社紹介しています。

5つの会社のうちの2社、「日本理化学工業」と「中村ブレイス」は、TV番組「カンブリア宮殿」の中でも紹介されました。

「日本理化学工業」は、チョークを作っている会社ですが、驚くことに、その社員のうち実に7割が知的障害者です。「人を工程にあわせるのではなく、工程を人にあわせる」ことによって、障害を持っている人でも、やりがいを持って生き生きと働ける職場となっています。私が勤務している高校でも、「日本理化学工業」で作られたチョークを使っていました。もう一つの、「中村ブレイス」は、島根県の石見銀山の麓という辺鄙なところにある会社ですが。日本だけでなく、世界中から注文が来る会社です。何を作っているのかと言えば、事故などで体の一部を失った人のための義肢装具です。義手、義足だけでなく、耳、鼻、指、女性の乳房など、実に様々なものを作っています。どれも本物と見間違うようなリアルな装具です。

働くことの意味、企業が果たすべき社会的な役割について考えてもらいたいとも思い、この2社を紹介した「カンブリア宮殿」を、昨年総合学習の時間で2年生全員に見てもらいました。両方とも、本当に真剣に生徒たちは見てくれ、しっかりとした感想を書いてくれました。「中村ブレイス」を取り扱った番組の中で、農作業の事故で足を失った方が中村ブレイスの義足を身につけることにより、自分の足でまた立つことができたという場面がありました。番組の中で、その方は「二本足で立てるっていうことはこんなにすばらしいことなんだ」と涙ぐんでいましたが、その場面を見て、何人もの生徒が涙を流していました。実は、その義足を作った社員の方自身も幼い頃に両足をなくし、昔、中村社長に義足を作ってもらった方でした。自分自身が、義足をつけているから、お客さんお気持ちがよくわかると、その方は話していました。

この本も、カンブリア宮殿のビデオもおすすめです。もし、このビデをご覧になりたい方がいらっしゃいましたら、私までご連絡ください。