全国研「指定管理者制度分科会」の報告2011年12月11日 20時36分23秒

以下の文は、世話人として書いた今年の全国研の「指定管理者制度の分科会」の報告です。(報告集に載る際には、多少の表現上の手直しが入るかもしれません。)

本文中にも書きましたが、国自身がある程度の問題点を認め、「学童保育にはなじまない」ということが誰の目にも明らかになっているにも関わらず、いまだに多くの自治体で導入の動きが続き、子どもや保護者が大変な負担、苦労を強いられています。

学童保育の制度をもっとしっかりとしたものとし、指定管理者制度を一日も早く撤廃することを願わすにはいられません。

 

指定管理者制度が導入されすでに8年が経過した。この間の各地域における運動や学習を通して、「指定管理者制度は学童保育になじまない」ということは共通の認識となっている。また、各地域で起きている矛盾や問題点を踏まえて、昨年12月には総務省より局長通知が出された。片山総務大臣(当時)は、「指定管理者制度をめぐる誤解」や「理解不足」を解くために出したと述べ、本来「一番のねらいは、行政サービスの質の向上にあるはず」なのに、「コストをいかにカットするかというところに力点が置かれてきた」、「本来、指定管理者制度になじまないような施設についてまで、指定管理の波が押し寄せて」おり、「懸念して」いると述べた。

各地の運動が前進し、国自身が制度の問題点をある程度認識し始めてきているという状況の中で今回の分科会が開催された。また、今回初めて法律の専門家として弁護士である城塚健之氏を助言者としてお招きした。

 

◎滋賀県A市からのレポート

2004年度から指定管理者制度が導入。第1期は、各父母会が指定管理者に。しかし、「何か事故があった場合の責任は、指定管理者にかかることから、いつまでも保護者会による運営は困難との思い」から、次期の指定管理者として社会福祉協議会にお願いをした。市内での学童間の格差が拡大するとの懸念から9カ所一括公募を要望。2期目も3期目も一括で社会福祉協議会への指定が決定した。問題点-①運営者が変わることは学童保育になじまない、②分割公募は、市内の学童保育に格差を生じる可能性がある、③何も知らない保護者が多くなり、現状についての問題意識が低下、④保護者と一線を引くような管理運営など、よりよいサービスの提供にはつながっていない、⑤指導員の安定的な人材確保、継続性・安定性が困難に。

◎兵庫県B市からのレポート

2006年に指定管理者制度が導入。最初の2年間は、非公募でそれまでの委託先である社会福祉協議会に。2008年度から一部公募。その理由は、「社協の経費削減の努力が足らないので更なる努力を求めるため」。該当の4校区6学童のうち、1校区2学童が神戸YMCAが指定管理者に。残りの学童についても順次公募という方針。該当の学童以外は切迫感がなく運動が困難に。制度の導入によって「行政側が経費の削減のみを強要し、従来の委託時よりも更に無責任となっている。」指定管理者の引き継ぎに関しては、実質的な引き継ぎはなく、「その為、4月5月と子ども達は不安定な状態になったとの話も聞」く。

◎東京都C市のレポート

学童保育だけでなく、積極的に指定管理者制度を導入。導入施設は907施設に。学童保育については68学童を12の法人が指定管理者として運営。制度導入によって起きたこと。①「5年ごとの選定」により、保育の継続性・安定性が失われた、②保護者・指導員の自発的・協同的活動が弱くなった、③学童事業者間の交流・協働が弱くなった、④事業者のコスト削減衝動による、備品・遊具の不足と破損放置、⑤社協が再指定に名乗りを上げず、「事業者の撤退の危険性」が現実に。

 

レポートおよび討議を通して、指定管理者制度の問題点が誰の目にも明らかになってきているにも関わらず、新たに導入される地域は増えており、それぞれの地域の保護者や子ども達、父母会に多大な負担を強いているということが分かった。

 

「学童保育になじまない」ということは分かっていても、現在の政治社会状況、各自治体の力関係などの中で、この制度を受け入れざるを得ない自治体も多い。また、毎年保護者が入れ替わる中で、知識や運動を継承していくことが難しく、行政との対応や運動をきちんと組み立てていくことに困難を抱えているところも多い。

 

こうしたことを考えた場合、制度についてのきちんとして知識、行政との対応の中でどのような点に注意しなければならないか、仕様書や協定書などについてどのようなことを求めていけばよいのかなどについて、全国の運動や実践をまとめていくことが急務ではないかと思われる。

 

さまざまな困難はあっても、子どもの「最善の利益」を第一に考え、子ども達が豊かな放課後を過ごすことができるように、行政や議会だけでなく、はば広く地域の人々に働きかけ、積極的に運動を進めていくことが重要である。

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