「全国学力テスト」~お金の無駄遣いでは・・・。2009年04月05日 16時03分45秒

今月21日(火)に、第3回目となる全国学力調査が行われます。ご承知の通り、この学力テストは、全国の小学校6年生と中学校3年生全員を対象に行われるテストです。テスト科目は、算数(数学)と国語の2科目で、それぞれ「知識力を問う問題」と「知識活用力を問う問題」の2種類に分かれています。この2科目に加えて、児童・生徒の学習・生活環境に関するアンケート調査も行われます。

今日の朝日新聞朝刊で、朝日新聞が65ある都道府県・政令指定都市の教育委員会に、この全国学力調査に関してアンケートを実施した結果が載っていました。このアンケートによると、「小6、中3の全員に毎年実施する今の調査を今後も長く続けるべきだと考える教委は、21(31%)」しかないということです。朝日新聞の記事では、「国の教育政策について教育委員会が実名で答えるアンケートで、ここまで賛成意見が少ないのは異例」であると指摘していました。

この全国学力調査には、愛知県犬山市を除く、全ての公立小中学校が参加しています。(私立学校の参加率は50~60%程度)200万人以上を対象としているため、実施には、かなりのお金がかかります。2006年度に、準備事業として21億円、07年度に60億円、08年度に62億円をかけ、今年度も57億円が計上されています。この4年間で、200億円も使っていることになります。

文科省が出している全国学力調査結果のポイントでは、この学力調査で、次のようなことが分かったとしています。

  • 知識・技能の定着に一部課題があり、知識・技能を活用する力に課題がある。

  • 算数・数学の問題の解き方が分からないとき、あきらめずにいろいろな方法を考える児童生徒、算数・数学の授業で、公式やきまりのわけ(根拠)を理解しようとする児童生徒の方が、算数・数学の正答率が高い傾向が見られる。

  • テストで間違えた問題について、間違えたところを後で勉強している児童生徒の方が、正答率が高い傾向が見られる。

  • 家で自分で計画を立てて勉強する児童生徒の方が、正答率が高い傾向が見られる。

  • 読書が好きな児童生徒の方が、国語の正答率が高い傾向が見られる。

  • テレビゲームをする時間が短い児童生徒の方が、正答率が高い傾向がみられる。

これを読むと、「極めて当たり前のことじゃん!」と思ってしまいます。本が大好きな子の方が国語が出来なかったり、テレビゲームばかりしている子の方が正答率が高い傾向があったりすれば「びっくり!」ですが、当然予想される極めて常識的な結果となっています。

さらに、次のようなことも指摘しています。

  • 平均正答数、平均正答率、中央値、標準偏差を見ると、19年度同様、地域の規模等による大きな差は見られない。

  • 平均正答率をみると、19年度同様、ほとんどの都道府県が平均正答率のうち±5%の範囲内にあり、ばらつきが小さい。

全ての学校、生徒を対象としていますから、学校ごとに1番から最下位まで、学校名を出すことも可能でしょう。しかし、国が行っている統計調査としてみた場合には、そういう順位を出し、学校名を公表することよりも、地域ごとの格差がそれほど大きくなく、日本全国でほぼ同じようなレベルの教育が行われているということが確認できたということの方が意味あることなのではないかと思います。

こういう「当たり前」な結果を出すために、毎年何十億円というお金を使う意味があるのかなと常々考えていました。全員を対象とした調査ではなく、一部だけを抽出した調査で十分ではないかと思っていました。今日の朝日新聞で、お茶の水大学副学長の耳塚寛明氏が次のようなことを書いていました。

全国学力調査の検討段階から、国の検討会議のメンバーとして「実施すべきだ」と言い続けてきた。だが、悉皆(全員対象)調査の必要性があったわけではない。当時の中山文科相の考えもあり悉皆となったが、今は「学力調査はいらない」という政治家もいるくらいで、再検討する時期がとうに来ている。

全員を対象とした調査となったのは、当時の中山文部科学大臣の意向を反映したものであるというのです。中山氏と言えば、昨年9月にこんな発言をしていました。

  • 「日教組の子どもは成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低い」

  • 私が全国学力テストを提唱したのも、日教組の強いところは学力が低いと思ったからだ。だから学力テストを実施する役目は終わったと思う」

個人として、どのような考えをお持ちでも構わないと思います。しかし、その自分の考えを確かめたかったから、毎年数十億円もかけて、全員を対象とした学力調査を始めたのだとしたら、とんでもないことであり、あいた口がふさがりません。

こういう調査にかけるお金があるのであれば、教職員数を増やしたり、教育条件を改善することにお金を使った方がはるかによいことなのではないかと思います。このことについては、また別の機会に書きたいと思います。