真実(まこと)を胸に刻み、共に未来を語ろう!2011年06月16日 22時56分40秒

フランスの詩人ルイ・アラゴンの有名な詩「ストラスブール大学の歌」の一節に、「教えるとは共に希望を語ること 学ぶとは真実(まこと)を胸にきざむこと」という言葉があります。教育の本質を伝える言葉として、いろんなところで繰り返し使われていますし、私自身も何回か使ったこともあります。しかし、私なりにこの言葉の意味をきちんと理解できたのは、比較的最近のことです。

私は高校の教員になって30年が過ぎましたが、「希望を語る」どころか、何回言っても言うことを聞かない生徒に業を煮やし怒鳴りつけてしまったり、クラス経営がうまくいかないのを生徒や親のせいにしたり、自分自身の思いを一方的に押しつけたり、そんな失敗をいやというほどやってきました。

個性を持ち、いろんな環境の中で育ってきている一人ひとりの子どもを「丸ごときちんと受け止める」ということが決定的に大切であるということは、学校での実践や研修よりも、学童保育の研修会に参加し、いろんな報告や講演などを聞く中で学んだように思います。講演された先生方の本を何冊も読んだり、そこで紹介されている研究書などを読む中で、子どもに対する理解が深まりました。また、障がいを持っている子ども達についても学童の研修会やプロジェクトなどの中で学ぶことがとても多く、高校現場での生徒との対応にも大変役立ちました。

こういう研修を積んだからか、あるいはただ単に歳を取ったからかもしれませんが、ここ数年は以前にもましてさらに生徒の話をじっくりと聞くようになってきました。生徒の話の中には、わがままで一面的で未熟な面もいっぱい含まれています。しかし、そうした面も含めてきちんと受け止めて話を聞いてもらえるということは、生徒にとってとても嬉しいことのようです。生徒が抱えている悩みや課題について一緒に考え、生徒の良いところをいっぱいほめてその成長を励ましている毎日です。子どもの辛さや思いを同じ目線で話し合え、子ども達を励まし、支え、共に未来への希望を語れるような保育実践、教育実践をこれからも続けていきたいものだと思います。

「真実(まこと)を胸に刻む」ということに関して、私が今痛切に反省していることは、原子力発電についてです。古本屋で、たまたま原発問題の岩波ジュニア新書を見つけたので2冊(樋口健二著「これが原発だ」、西尾 漠著「原発を考える50話」)買って読みました。2冊とも15年~20年も前に発行された本ですが、まるで今の原発事故を予測しているかのようにその危険性を的確に指摘していました。福島第一原発のマーク1型という原子炉の設計者は、設計上の脆弱性があるので使用を停止すべきだと40年も前に指摘していたとか、福島第一原発は、運転開始直後からトラブルの連続であったなどということが今になって新聞や週刊誌で報道されています。こうしたことは当然国も東電も承知していたはずでしょうが、彼らから「真実」が語られることはありませんでした。

原子力発電所は、科学の粋を集めた安全なものなどではなく、常に故障を繰り返し、そのたびに下請けや孫請けの労働者達が被曝の危険の中で、時にはぞうきんで放射能を含んだ汚染水を拭き取るというような原始的な方法で対応しなければ運転を続けることができないきわめて危険なものであるということが、私の中では確信となりました。こうした危険なものの存在を許し、何の行動もしてこなかったということは、痛恨の極みです。

あふれる情報の中で、「真実を胸に刻む」ということは、実は簡単なことではありません。貧困の問題にしろ、無縁社会の問題にしろ、今急に出てきた問題ではありません。その「事実」があったのに、私達にはその「事実」を見る目がなかったということだろうと思います。「真実」を見抜く目を養うには、やはり常に目の前の現実から出発することです。そしてもう一つ大切なのが、子ども達のために自分ができる精一杯のことをしようという「情熱」だろうと思います。

日々の研修を通し、真実を胸に刻み、子ども達と共に未来への希望を語り合うことのできる素敵な指導員として、そして一人の人間として成長していくことができるように、みんなでがんばっていきましょう。

(この文は、指導員会の学習部ニュースの原稿として書いたものに、加筆したものです。)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://genkikko-koike.asablo.jp/blog/2011/06/16/5916759/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。