民主圧勝の総選挙予測を見て-衆院選に2票あることの意味2009年08月22日 22時18分24秒

ここ何日か、いろんな新聞で衆議院選挙の当選予測が発表されました。どの新聞も、民主党が480議席中300議席以上を越え、圧勝すると予想しています。前回2005年の郵政選挙では、民主党113議席に対して自民党が296議席を獲得していましたので、完全に立場が逆転するという予想です。

なぜこんな極端な結果が生じるのかと言えば、現在の衆議院の選挙制度が、小選挙区制度を基本としているからです。480議席のうち300議席が小選挙区選挙で、180議席が比例代表選挙で選ばれます。(制度導入当初は、比例区が200議席でしたが、その後180議席に減らされました。)

小選挙区ということは、その選挙区で当選できるのがトップの得票をした一人しかいないということです。その選挙区でトップの得票を取るということは、候補者個人がずば抜けた知名度や人気を持っていない限り、ほぼ間違いなく大政党が勝利することになるでしょう。大政党同士の闘いとなった場合、どちらに「風」が吹くかということで、結果ががらっと変わってしまいます。前回のように、小泉首相の個人的な人気のもとで「郵政民営化賛成でなければ人に非ず」といったような雰囲気の中では自民党が圧勝し、今回のように、自・公連立政権の失政に国民が愛想を尽かし、変化を求めているときには、民主党が圧勝するということになります。

問題なのは、小選挙区制度は、民意を正確には反映しないと言うことです。前回の選挙では、小選挙区の獲得議席で見ると、自民党が73%、民主党が17%を獲得し、自民党が圧勝した形になっています。しかし、得票数を見ると、自民党が47.8%、民主党が36.4%とその差は獲得議席ほど多くはありません。小選挙区制度では、とにかく1票でも多く取った候補が議席を獲得し、それ以外の候補に投票した票は全て死票(民意が反映されない票)となってしまいます。5人の候補が立候補し、それぞれがほぼ均等に得票した場合、わずか21%の得票で当選することができ、残りの79%の票は、死票となってしまいます。

小選挙区制度を導入した時の理由は、「政策中心の選挙になる」「選挙に金がかからなくなる」「政権交代ができる」というようなものでした。最初の2つは、別に小選挙区制度でなくてもやる気になればできたことだと思います。3番目の「政権交代」については、確かに今回実現できそうです。しかし、多くの票が死票となり、国民の声をきちんと反映しない形で「政権交代」が起こるのだとしたら、素直には喜べません。政治にとって一番大事なことを忘れているような気がしてなりません。

必ずしも民意が反映されない中で、一つの政党が3分の2近くの議席を独占してしまうということにたいしては、不安を感じざるを得ません。

選挙制度に関して、自民党は「衆議院議員を1割以上削減」、民主党は「衆議院の比例代表定数を80削減」ということを、今回の選挙のマニフェストに掲げています。

現在の選挙制度が導入されたときの国会論議では、「小選挙区制は民意を反映しない選挙制度である」という批判が出されました。この批判に対して、政府の答弁は、「民意の反映は、比例代表で補う」というものでした。導入当時からみると、すでに20議席削減されていますが、この上さらに比例代表定数を削減するというのは、議会制民主主義の根幹を脅かす暴挙ではないかと思います。

現在の衆議院制度のもとで2票あることの意味を考えてみました。

小選挙区は、どう考えても少数政党が議席を獲得することは困難です。勝てそうな議員の中で、よりましな方を選択するというような決め方が現実的なのかもしれません。

しかし、比例代表については、じっくりと考えた方がよいと思います。先ほども言ったように、小選挙区は、大政党に非常に有利な制度です。しかも、小選挙区の総議席数は120議席も多いわけです。大政党はすでに、この時点でかなり優遇されており、小選挙区で多くの議席を獲得することができます。この上さらに、比例代表で単純に大政党に議席を上積みするとしたら、小選挙区で死票となった民意を、国政にきちんと反映することはできないのではないでしょうか。「民意の反映は、比例代表で補う」という政府答弁にもあるように、民意をきちんと国会に反映するためには、政党の大小や「勝てそうだから」とか「何となく」ということではなく、政策やその政党の姿勢を見て、自分が本当に良いと思った政党に投票していくということが大切なのではないかと思います。

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