指導員が息長く働き続けるために必要なこと2009年03月26日 09時05分42秒

先週日曜日、埼玉県学童保育連絡協議会(県連協)主催の、労働条件改善委員会公開交流会に参加してきました。この会は、昔は「指導員の労働条件改善のための一日学習会」という名前で、年に一回一月に開催されていたものです。今年は、時期も少しずらし、趣向も変えて開催されました。

今年のテーマは、「指導員が息長く働き続けるために必要なことを探る」というものでした。まず最初に、県連協の労働条件改善委員会がこの1年間に現場の聞き取り調査なども行い、討論を重ねてきたことを報告しました。「指導員は3年で大半が入れ替わる」という実態があり、「その理由の大半は、賃金・労働条件の不十分さの問題が基底にある」ということは事実でしょうが、しかし「それだけではない」ということで、多方面にわたって分析を加えた報告でした。

学童保育は、子ども達にとって、家庭に代わる、放課後の生活の場です。どんなに素晴らしい施設を作っても、どんなに立派な保育指針を作っても、それを実践する指導員が、意欲を持って息長く働き続けられないのであれば、全く意味がありません。子どもを支え、親を支え、そしてみんなで協力し合いながらお互いが成長していくことのできるである学童保育、それを支える要(かなめ)は、なんと言っても指導員です。

学童保育は異年齢の集団ですが、その中でも、一人ひとりの思いをきちんと受け止めらながら、同時に集団としてもきちんとしたまとまりを作っていくことが求められています。ある意味では、学校の先生よりも高い専門性が求められていると思います。私は、高校の教員をやっていますが、学校現場ではなかなか学べないようなことを、学童保育の中でたくさん学ぶことができたと思っています。しかし、残念ながら、学童保育の指導員は、その専門性にふさわしい労働条件、待遇を受けているとは言えないというのが現実です。 その専門性にふさわしい賃金・労働条件を実現していくということが、まず必要だと思います。

賃金や労働条件を改善していくことは、極めて重要なことです。しかし、このことは、必要条件ではあっても、十分条件ではありません。この会議の中で、登場沿線ブロックの指導員約250名に対して行った「聞き取り調査」の結果が報告されていましたが、大変興味深いものでした。以下にそのうちの一部を紹介します。

「指導員をしていて辞めたいと思ったことはありますか?」

  • ある-162人(64.5%)
  • ない- 89人(3505%)

「辞めたいと思ったとき、辞めずに思いとどまった理由」(複数回答)

  • 子ども     -47人(18.7%)
  • 保護者     -22人( 8.8%)
  • 指導員組織・仲間-53人(21.1%)
  • 労働条件    - 7人( 2.8%)
  • その他 -73人(59.1%)

6割以上の人が、「辞めたい」と思ったことがあると答えています。辞めたいと思ったにもかかわらず辞めなかった理由の一番は、「指導員組織・仲間」となっており、次に、「子ども」、「保護者」となっています。「その他」と答えた人の中でも、保育のやりがいや、「指導員」「子ども」「保護者」などとの関わりについて触れている人がたくさんいました。

この日の午後の分散会の中でも、何回も「辞めてやる」と思ったけれど、そのたびに、保護者から励まされ、子ども達から、「先生大好き」とか「私が卒室するまでいてね」などとやさしい言葉をかけられ、「もうちょっとがんばってみようかな」と思っているうちに十年近く経ってしまったという指導員さんの発言がありました。

その専門性にふさわしい賃金・労働条件の改善ということは当然必要なことですが、それに加えて、指導員同士、あるいは父母と指導員との協力関係、支え合いということが不可欠なのだと改めて感じました。学童保育というのは、やはり、信頼関係に基づき、父母、指導員、子ども達が深く関わり、協力し合ってこそ成り立っているのだと思います。