「陽気な介護日記」2012年06月29日 21時43分44秒

昨日のブログでも書きましたが、5月下旬から、妻が介護休暇を取り、義母の介護にあたっていました。義母の葬儀に当たり、その体験を多くの人に知ってもらいたいと思ったようで、「陽気な在宅介護日記」という一文を書きました。

高齢化が急速に進むなか、介護の問題は、誰にとっても他人事ではないだろうと思います。多少参考になればと思い、妻の一文を紹介します。

陽気な在宅介護日記

職場で、「介護のため休暇を取らせていただきます。」とご挨拶すると、「よくご決意なさいましたね。」とご心配くださる方がいらっしゃいました。予想以上に、介護を身近なことと捉えてくださる方が多く、温かく見守ってくださったおかげで、専念することができました。有り難うございました。

でも、正直申すと「母の最後は私がしっかり看ます」と固い決意をした美談ではなく、自然とそうなってしまった結果でした。母は自分で体力が徐々に衰えていくことを感じており、長女の由美子に迷惑をかけまいと、自分で「入院か施設に入所する」と申しておりました。施設も探しながら母がどのようにしたいか話し合い、「できれば最後まで今まで通りデイケアに通いたい。」と言っておりましたので、様子を見ている矢先に入院ということになりました。退院が思いの外早かったので、そのまま自宅で看ることになりました。

母の気持ちを考え、弟と「胃瘻はしない、中心静脈栄養のカテーテルはしない」という確認は取り合っていました。

 

在宅介護という得難い経験をさせてくれた母に、心から感謝しています。

 

ケアマネージャーから訪問看護を紹介され、丁度かかりつけの正務医院の訪問看護師さんをお願いすることができました。介護ベッドを使った方がよいことをアドバイスされ、都合の良い日を指定するとその通りに搬入してくれました。「介護ベッドって色々装置がついていて高そう?」と思いましたが、床ずれができないように最上級のものを選びました。でも、レンタルで月2000円。非常に驚きでした。営業の方が若く、「偉いですね。若くてこのようなお仕事を選んで。きっかけは何だったんですか?」などと、進路指導に役立つかも、と思わず教員心理が働き聞いてしまいました。「お母さん、イケメンの若い素敵な男性で良かったね。」等と冗談を言い、結構在宅介護を楽しむことができました。

 

訪問看護師さんは、定例で週1回の訪問ですが、自宅で血液検査もでき、その結果脱水症状があるとお知らせくださり、水分補給の点滴だけは毎日することになりました。毎日看護師さんが来てくださるので、医療的なケアも心配することなく安心して過ごすことができました。

「母はビールが好きで・・・」と話しのついでに出てしまったら、「水分取れれば、ビール飲んでも良いですよ。私も好きですからね。朝からじゃアルコール中毒になっちゃうけど、昼からだったら良いんじゃないですか?大江さん、お寿司でもウナギでも美味しいおつまみ食べさせてもらって、ドンドン飲んでください。」と言われました。病院や施設ではこういう分けにはいかない。看護師さんからのお墨付きをいただきたので、それからは毎日飲ませてあげていました。母としては本望だったでしょう。横浜の弟は、岩手の高原地ビールをせっせと送ってくれました。

血液中の酸素濃度も毎日検査してくださいましたので、医師の指示で「酸素が足りないからボンベをしましょう。」と言われました。「え~酸素マスクをするんですか?今週の土曜日に親戚が来るので、その後にしてくださいませんか?」と言うと、「マスクじゃなくて、鼻からで充分ですよ。」と言われお願いしました。すると翌日直ぐに専門の業者の方が酸素を作り出す機械を設置しに来てくださいました。「在宅看護って至れり尽くせりなんだな~」と大変驚きました。よく考えると命に関わることだから、酸素は24時間いつでも対応してくださるのです。情報で知識としては知っていても、初めて経験し、身をもって尊い仕事だと感じました。

 

また、訪問入浴サービスも契約しました。写真をご覧ください。

訪問入浴2
訪問入浴1

必ず看護師さんが同行し、血圧、脈拍、呼吸数を確認してOKだったら写真の通り部屋に設置して入浴できます。「今日の入浴剤は、ももとラベンダーですがどちらが良いですか?」と聞かれびっくり!「お母さん、入浴剤を選べるんだって!ラベンダーは北海道の富良野畑が有名よ。」と言うと、北海道野ラベンダー畑を想像するような顔をしていました。爪も切ってもらいました。若いスタッフさん3人でとても良く笑ってくださり、部屋が明るい雰囲気になりました。

 

6月23日(土)は血圧が低すぎて入浴はダメそう・・・となったときも、5回も6回も計り直してくれました。「お母さん、お風呂入ったらビールのませてあげるから、血圧上げて!スタッフさんは若い男性だから、胸を時めかせて!」と言うと、責任者が「私どもの会社の医師の基準もありますので・・・」と言われ、ハッと我に返りました。そうだ、私が興奮しすぎ?と恥ずかしくなったり。でも「午前中の方が体調が良ければ、7月から時間を変更しましょう。」と細かい気遣いをしてくださいました。

自分が在宅介護をしなければ、こういう経験はできませんでした。仕事をしているときには、母になかなか優しい言葉をかけてあげられなかったので、本当に色々な方に支えられ、決して孤独な介護ではなく、母と濃厚で貴重な時間を過ごすことができました。このような経験をさせてくれた母に、心から感謝しています。そしてそれをサポートしてくださった介護・医療関係の方にも心から御礼申し上げます。

 

毎日母の様子を見ていたので、呼吸の変化にも直ぐに気がつき、家族3人で見守ることができたのだと思います。

 

最後の診断をしてくださったのは、母が草加に来てからずっと見守ってくださった正務秀彦先生でした。いつも励ましてくださり、母が心から信頼しておりましたので、最後を見届けてくださったことに感謝しております。首都圏における地域医療の大切さ、命を守る医師の使命を身をもって教えてくださいました。

お世話になったすべての方に心から御礼申し上げます。

喪主 小池 由美子