指定管理に関わる新しい動き2008年02月13日 22時50分14秒

先日、県連協(埼玉県学童保育連絡協議会)の指定管理プロジェクトに参加し、いくつか新しい情報を聞いてきましたので紹介します。

一つは、全国社会福祉協議会が、昨年12月に発表した「社会福祉施設等における指定管理者制度をめぐる現状と課題」という文書です。全国社会福祉協議会では、「指定管理者制度に関する検討会」を設置し、昨年2月から10月にかけて検討作業を行いました。この文書は、100ページを超える大部です。全文については、全国社会福祉協議会のHPから、PDFファイルをダウンロードすることができます。ここでは、「3.指定管理者制度に関する提言」、「指定管理者制度に関して改善すべき事項(行政に対する提言)」の中で指摘している点のいくつかを紹介します。




本来、指定管理者制度の本質を考えれば、当制度を導入することにより行政、住民(利用者)、指定を受けた民間事業者の三者はそれぞれメリットを享受できる関係とならなくてはならない。さらに、措置施設等の社会福祉施設には、サービスの継続性・安定性が求められるが、現状は、行政コストの削減にのみ重点がおかれ、本来行うべきサービスに影響が出ている。とりわけ、母子生活支援施設に関しては危機意識が高い。(中略)このように、指定管理者制度は対象とするサービス内容によっては特別な配慮がなされない限り、制度そのものになじまない事例が存在するのも事実である。このような事例も含めて、次に述べるような配慮がなされるべきである。

国は、自治体に対して、公的な責任の観点から、効率化のみに陥らないよう、公の施設のサービスの質の向上を図るなど、所期の目的に取り組むよう指導するべきである。さらに、指定管理者制度の導入に際して、そもそも導入しようとする分野、内容が制度になじむものか、再度検討されるべきであり、とくに、社会福祉施設への導入にあたっては、国として利用者に必要なサービスが提供されるとともに、施設運営のためのコストが一方的に削減されることがないよう、以下の(2)に示すとおり、自治体への働きかけが強く求められる。

社会福祉施設に関しては、利用者にとって必ずしもサービスを提供する民間事業者が短期間のうちに変わっていくことはメリットとはならず、かえって継続性、安定性、情報管理等の面からは大きなデメリットが想定される。このような場合には、提供されてきたサービス内容を正しく評価したうえで選定を行うとともに、更新時の指定管理者選定にあたっては一定の配慮がなされるべきである。

サービスの質が正しく評価できないため、比較が価格面に偏り、価格の過当競争に陥り、安かろう、悪かろうという悪循環に陥りかねない。しかも、自治体側がコスト削減に拘るあまり、必要とされるサービスの提供が困難になる事例が見られる。

社会福祉施設においては、利用者が安定的かつ質の高いサービスを継続的に受けられるよう最大限の配慮がなされるべきであり、福祉施設の指定期間については、2~5年という短期間で交代の可能性がある制度の設定を変更し、施設の特性に応じて、弾力的な期間設定がなされるべきである。




もう一つは、三菱総合研究所パブリックビジネス研究会が、昨年9月に発表した「指定管理者制度に係わる第四次提言」です。サブタイトルが「~次のステージに向けたベスト・プラクティスの共有~」となっています。「第四次提言」とあるように、パブリックビジネス研究会は、これまでも指定管理者制度について提言を行ってきましたが、今回は、「指定管理者の実務経験に基づく制度運用上の改善策の提示、及び具体的事例に基づくベスト・プラクティスの共有といった視点に立って」提言を行うとしています。この報告書も、パブリックビジネス研究会のHPでダウンロードすることができます。提言の中から、何点かを紹介します。




市民ニーズ、施設管理能力、要継続等の観点から、特定の団体を特命することが適当と考えられる場合は、無理に公募に付すのではなく、明確な理由を付した上で特命指定を行うべきである。

指定管理者の指定は原則公募によることは承知しているが、指定期間を通じて一定以上の評価を得た指定管理者については、次回の指定においては公募過程を経ずに、匿名指定を受けることができるような仕組みも検討すべきである。

利用者が現状のサービスで満足し、施設の設置目的が充足され、かつ自治体の支払い指定管理料が一定以下であれば、指定管理者を交替する理由はない。なぜなら、それは指定管理者、行政、及び市民の全てにとっての利益をもたらす、いわゆる「トリプル・ウィン」の状態だからである。

それを無理に公募すると、場合によっては低価格の応募があり、サービスの質が低下するといったことも想定される。

提言1にもあるように、公募という原則に拘泥するのではなく、現実的な観点から、公募の必要がない、或いは公募すべきでない案件については、明確に理由を付した上で、匿名指定を行うべきである。




この二つの文書とも、この間私たちが指摘し、主張してきた点とほぼ同じ内容のことを述べています。全国社会福祉協議会のような全国的な団体、あるいは三菱総研のような財界関連の団体でも、私たちと同じような主張をしているということは、この指定管理者という制度が、誰が見ても問題がある制度であるということを証明しているのではないでしょうか。

この二つの文書は、以下のページで見ることができます。

社会福祉施設等における指定管理者制度をめぐる現状と課題

指定管理者制度に係わる第四次提言

第3回子育てシンポジウム~250人以上が参加し、大成功~2008年02月18日 23時37分49秒

2月17日(日)、草加市谷塚文化センターにおいて、草加市学童保育の会と草加・元気っ子クラブとの共催で、「第3回子育てシンポジウム」を開催しました。

今回のテーマは「みんなで考えよう 曲がり角の子育て、曲がり角の学童保育」でした。焦点となったのは、学童の大規模化ということです。学童が大規模化することにより、家庭的な雰囲気を保つことが難しくなり、学童本来の良さというものが失われつつあります。その中で、子どもも親も指導員も、傷つき、多くの困難を抱えています。こうした状況を何とか打開し、本来の学童保育の良さを回復していこうという思いを込めて、基調提案のタイトルは「学童保育の再生のために」としました。

当日は、谷塚文化センターのホールが満杯となる250名以上の保護者、指導員の方に参加していただきました。来賓も、今井衆議院議員、木下市長、健康福祉部長、子育て支援課長、蒲生県議、関市議、斉藤市議、丹羽市議、西沢市議、須藤市議を始め、多数の方にご参加いただきました。(谷古宇県議、山川県議からは、所用のため出席できない旨のご連絡を頂きました。)

私の基調提案のあと、4名の方に報告をしていただきました。それぞれのテーマは、「学童に育ててもらった父と娘」「笑顔のバトンをつなげよう」「侍史保育の経緯と取り組み」「つながりの中での子育てを」でした。どの報告も、すばらしいものでした。

大変に忙しい中で、必ずしも十分な準備ができずに臨んだシンポジウムでしたが、参加者数、内容ともに、予想以上の結果であったと思います。アンケートには、「報告を聞いていて、感動し目頭が熱くなった」というような感想もたくさんありました。また、第1回目から、毎回参加していただいていた方もたくさんいたようです。いろんな困難を抱えつつも、この困難に負けずに、新しい展望を切り開いていくだけの力を草加の学童は持っているのだということを示したシンポジウムであったと思います。

シンポジウムが終わったあと、110名の方からアンケートを頂きました。きちんとしたまとめは後日行いますが、良かったかどうかという設問についてのみ、数字をまとめてみました。「大変良かった」と「良かった」を合計すると、82.7%になります。

  • 大変良かった-44人(40.0%)
  • 良かった  -47人(42.7%)
  • 普通    -11人(10.0%)
  • 悪くない  -4人 (3.6%)
  • つまらない -0人 (0.0%)
  • 未記入   -4人 (3.6%)

お忙しい中ご参加いただいた皆様、寒い中最後まで外で駐車場の整理などをやりシンポジウムを裏で支えてくれた運営委員の皆様を始め、今回のシンポジウムの成功のためにご尽力いただいた全ての方々に感謝申し上げます。今回のシンポジウムの成功を力に、みんなで力を合わせて、これからもがんばっていきましょう。

草加市が「協働のあり方[指針]」を発表2008年02月24日 21時48分32秒

先日、草加市から「NPO・市民活動団体と市との協働のあり方 [指針]」の冊子が、正式に発表されました。この冊子は、49回にもおよぶ「NPO・市民活動団体都市との協働のあり方を考える会議」での論議を踏まえて作成され、今回、正式に草加市としての文書として発表されたものです。

この会議には、市内で活動する多くのNPO、市民団体が参加していました。元気っ子クラブでは、私(小池)と事務局長の伊藤さんが参加していました。伊藤さんは、この会議の座長を務め、中心となって文書をまとめました。

市との協働のあり方を、市民団体の立場から論議しまとめたということに大きな意味があるのではないかと思っています。さらに、市民団体が中心となってまとめたものを、市として認め、草加市の公式な文書として発表しているということも非常に重要だと思います。

何年もかけて苦労して作り上げた文書です。この文書が活用され、本当に市民の立場に立った協働がさらに進んでいくことを心から期待したいと思います。担当する課は、総合政策部みんなでまちづくり課です。興味がある方は、連絡してみてください。

この文書をまとめる中で、論議になったことの一つが、「委託や指定管理者制度は、市民との協働という観点で捉えることができるのか」ということでした。この点では、行政側との、とらえ方の違いがあるということもわかりました。結論としては、全ての委託や指定管理が協働という観点でとらえられるわけではないが、「協働という観点で捉えた方がより多くの効果を得られる分野があると判断」し、「協働の形態」の中に、委託や指定管理者制度を含めることとしました。この点も非常に重要だと思います。

論議になった点ですので、きちんと説明しておいた方がよいということで、特別に欄を設けました。この欄の内容を以下のページにPDFファイルとして載せました。ぜひ、お読みいただければと思います。

協働の視点から考える委託・指定管理者制度の捉え方