消費税増税法案、子ども・子育て新システム関連法案の成立に関して思うこと2012年08月19日 17時10分48秒

国民がオリンピックに夢中になっている間にということでもないでしょうが、8月10日、消費税増税法が民主党、自民党、公明党3党の賛成で成立しました。

貧困と格差が広がり、正規の仕事に就けない人が3人に1人、若者の非正規率はさらに高いという、若者が未来を描けない社会。無縁社会と言われるように高齢者の一人暮らし、孤独死が問題となっている社会。こういう中で、「社会保障と税の一体改革」と言いつつも、国民が安心して暮らせる「社会保障」の未来像を示すことなく、増税だけを押しつけるという今回の法律は、誰が考えたって愚行としか言いようがないと思います。

さらにびっくりしたのは、大手新聞が、こぞって消費税増税法の成立を評価する社説を掲げたことです。我が家では、日経新聞ともう一紙、朝日新聞と毎日新聞を交互にとっています。産業界の意見を代弁していると思われる日経新聞が、法人税増税ではなく広く薄く負担を求める消費税の増税を歓迎するのは分かりますが、それ以外の新聞までが、こぞって賛意を示しているのには驚きましたし、恐ろしくも感じました。

毎日新聞は、「『決める政治』を続けよう」と題して、次のように述べました。

まずは、二つの意味で政治史上画期的なことだと評価したい。第一に、その中身が国民に負担を求める純粋増税法だからである。(中略)第二に、その不人気政策を与野党で合意したという政治方式の新しさである。2大政党制の下、ともすれば相手をたたくことに走りがちだった政治が、この重要政策の一点では国益に立ち、党分裂や一部議員の造反というコストを払いながら妥協することができた。山積する困難な政治課題を解決するための貴重な前例を作ったととらえたい。

朝日新聞は、「一体改革成立-『新しい政治』の一歩に」と題して次のように述べました。

国会が消費増税を決めたのはじつに18年ぶりだ。民主、自民の2大政党が、与野党の枠を超え、難題処理にこぎつけたことをまずは評価したい。(中略)国民に負担を求める政策の実行がいかに困難か。一体改革をめぐる協議で、両党は身をもって学んだだろう。ここはチャンスである。政党同士、建設的な批判は大いにしあうのは当然だ。ただし、不毛な政争はやめ、協力すべきは協力する。一体改革関連法の成立を、そんな新しい政治文化をつくる一歩ととらえたい。

生徒には、「ちゃんと新聞を読みなさい」といつも言っていますが、その新聞の中身がこんなものでは、よほど批判的に読む力を付けないと大変だなと思いました。

「社会保障と税の一体改革」の関連法案として、児童福祉法改正を含む「子ども・子育て新システム関連法案」も成立しました。学童保育に関しては多少前進面があるかと思いますが、全体としては、非常に多くの問題を含んでおり、十分に論議尽くされたとは言えないまま成立してしまいました。すでに成立してしまった法律ではありますが、私たち学童関係者も、もっときちんと学習を積んでいくことが必要だろうと思います。

児童福祉法の改正の中で、学童保育の前進面と思われる点をいくつか載せておきます。

①第6条の3で、「おおむね10歳未満の」という文言が削除されました。つまり、対象児童を「小学校に就学している児童」と明確に規定しました。

②市町村は、学童保育の「設備及び運営について、条例で基準を定めなければならない」としました。この基準の中で、「従事する者及びその員数については厚生労働省令で定める基準に従い定める」こと、「その他の事項については厚生労働省令で定める基準を参酌する」こととしました。「従事する者及びその員数」を「従うべき基準」としたということは、国としてのそれなりの責任を示したものとして評価することはできますが、問題は、国としてどの程度の基準を設定するのか、その基準を上回る基準を市町村独自で決定して良いのかなどが課題となるだろうと思います。

「市町村は、必要に応じ、公有財産の貸付けその他の必要な措置を積極的に講ずること」という規定を新たに設けました。草加市では、当然のこととして、空き教室や学校敷地内の専用施設を利用していますが、そうではない自治体もたくさんあります。法律としてこのように規定し、小学校の余裕教室や敷地内等の公有財産の活用を進めていくということは重要なことだと思います。