浜名湖で女子中学生が死亡-本年4月から、株式会社が指定管理者になったばかりの施設。2010年06月20日 16時24分52秒

すでに新聞やテレビで大きく報道されていますが、静岡県の浜名湖で、中学1年生18名と教員2名が乗ったカッターボートが転覆し、女子中学生1名が死亡するという大変に痛ましい事故が起きてしまいました。

報道によれば、当時現場では、大雨、洪水、雷、強風、波浪の5つの注意報が出されていました。4隻のボートのうち3隻には青年の家のインストラクターが乗船していましたが、転覆したボートには生徒と教員しか乗っていなかったとも報じられています。浜名湖のマリーナやボートクラブの人の声として、「現場付近は波が集まりやすい場所。今日のように雨が強く降って視界が悪い日は、普通は湖に出ない」とか「波が高い中で人を乗せたままボートを引っ張ると左右に振られて危険。私なら引っ張る方の船に全員を移し、ボートを空にして引っ張る」などの声も出されています。(6月19日付、朝日新聞朝刊より)

この野外訓練を実施した「静岡県立三ヶ日青年の家」には、浜名湖において訓練を実施する上で、最低限求められる安全管理上の知識や技能が欠けていたのではないかと思わざるを得ません。

19日の夕刊では、この「静岡県立三ヶ日青年の家」は、今年3月までは静岡県の直営でしたが、4月より指定管理者制度に移行したばかりであるということを報道していました。指定管理者に選定されたのは、東京に本社のある「(株)小学館集英社プロダクション」でした。

ホームページによれば、小学館集英社プロダクションの事業は、主に「メディア事業局」と「エデュケーション事業局」の2つから成り立っているそうです。「メディア事業局」では、テレビ番組の制作やポケモンやドラえもんなどのキャラクターライセンス事業やイベントなどを行っています。おはスタ(TV番組)や劇場版ポケットモンスターなども、この会社が作っています。「エデュケーション事業局」では、ベビーシッターの派遣や幼児教育などに関わる事業を行っており、その一環として各地の「青年の家」などを指定管理者制度で運営しています。ホームページを見て初めて知ったのですが、埼玉県の青少年総合野外活動センター(草加の学童でもよく利用しています)も、この小学館集英社プロダクションが指定管理者として運営していました。

静岡県のホームページでは、指定管理者制度について次のように述べています。

「効率的で質の高い行政サービスの提供を目指して、企業系的な手法による新しい行政経営システムを導入しているところですが、公の施設についても、施設の設置目的にそって、より効果的で効率的な管理運営を行い、県民の皆さんへのサービスを一層向上させることが出来るよう「指定管理者制度」の活用に積極的に取り組んでいきます。」

静岡県では、こうした方針に基づいて、本年4月現在で44施設に指定管理者制度を導入していますが、「三ヶ日青年の家」もその一つです。

「三ヶ日青年の家」の指定管理者選定に当たっては、5団体から応募があり、一次審査(書類審査)、二次審査(プレゼンテーションとヒアリング)を経て、小学館集英社プロダクションが最高得点であるとして選定されました。

選定委員は6名(大学教授、公認会計士、野外活動専門家、株式会社代表取締役、中学校長、教育委員会社会教育課長)でした。「利用者の安全確保」は、審査項目の中で、事業計画(30点分)の中の6項目中の一つに過ぎませんでした。

小学館集英社プロダクションは、「職員体制」について、申請書の中で次のように述べていました。(太字は引用者)

「20年以上野外活動を通して社会教育に従事し、海洋プログラムに造詣の深い者を(現在、他県青少年教育施設の所長に従事している者)を三ケ日青年の家所長として登用する。また、中心的な指導担当者には、他県で運営している海洋型青少年教育施設の指導者でカッター訓練等に従事している実務経験者(2名程度)を配置、その他指導員等については、地元雇用を優先させ」る。

所長や中心的な指導者に経験者を配置するということは良いことでしょうが、所長や中心となる人たちの中に現地の状況に精通した人がいないというのは、場合によっては人の命に関わるようなこういう施設の管理にとって、問題があるのではないかと思います。東京に本社があり、現場のこともよく分からない株式会社が、他県での実績やプレゼン内容がよいということで、人の命に関わる施設の管理が簡単にできてしまうというのは、とても恐ろしいことだと思いました。

今回、直営をやめて、わざわざ指定管理者制度に移行する必要が本当にあったのか。静岡県の責任も問われるべきだろうと思います。

静岡県の方針や三ヶ日青年の家の選定について、詳しく知りたい方は、以下のページをご覧下さい。(静岡県のホームページです。)

静岡県の指定管理者制度方針

三ヶ日青年の家の選定結果、募集要項、仕様書

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