今日第3回目の全国学力調査-無駄遣いはやめて、教育条件の整備を!2009年04月21日 23時37分43秒

今日、全国の小中学校において、3回目となる全国学力調査が行われました。今回は、過去2回不参加だった愛知県犬山市も参加していますので、日本全国全ての公立小中学校が参加したことになります。その一方で、私立校の参加は毎回下がり、今回はついに5割を割っています。

全国学力調査についての私の考えは、4月5日のブログに書きました。簡単に言えば、定期的に実施する学力調査の必要性を認めるとして、悉皆調査(全員を対象とした調査)とする必要はなく、抽出調査で十分であり、毎年50億円から60億円もかけて実施するのは、無駄遣い以外のなにものでもないということです。

「市町村別や学校別の成績を明らかにせよ」ということを言う人もいますが、そもそも、悉皆調査をする必要がないところを無理矢理全員を対象とした調査を強行しているだけですから、「市町村別や学校別の成績」を明らかにすることは、意味がないことだと思います。本来知る必要がないことですし、逆にそれを公開することによって、無益な「点数競争」を引き起こしかねないということを考えたら、絶対にやるべきではないと思います。すでに、一部ではそうした「点数競争」が生まれているとも聞きます。

「市町村別や学校別の成績」を明らかにすることによって、各学校が競争し合い、創意工夫をするようになるから、公開すべきだなどという人もいます。私が、こうした議論を聞いていて、「おかしいなあ」と思うことは、日本の学校教育の制度や教育条件などに関してはほとんど論議がなされずに、学力の問題が、結局は個々の学校や教員の努力の問題にすり替えられてしまっているということです。

以前のブログでも紹介しましたが、昨年9月に、OECDが"Education at a Glance 2008: OECD Indicators"という文書を発表しました。この中で、クラスサイズや教員の労働時間などの比較も行っています。

クラスサイズについては、初等教育(小学校)段階で見ると、OECD加盟国平均が21.5人なのに対し、日本は28.3人となっています。(2006年の数字)日本よりもクラスサイズが大きいのは、OECD加盟国では韓国だけであり、日本は先進国の中でずば抜けてクラスサイズの大きい国だといえます。日本よりもクラスサイズの大きい韓国ですが、2000年の数字は36.5人でしたので、今回は、大きく改善が進んだと言えます。それに対して、日本は、2000年が29.0人、今回が28.3人であり、ほとんど改善が進んでいません。ここでは数字は紹介しませんが、中学校段階でも、全く同じ結果が出ています。

教員の労働時間を見てみます。初等教育(小学校)段階の教員で見ると、日本の教員の年間平均労働時間は1952時間となっています。OECD加盟国の中で、1900時間を超えている国は一つもなく、日本の教員の労働時間の長さはダントツの一位となっています。OECD平均が1662時間、お隣の韓国は1554時間となっています。

こうした国際調査から言えることは、日本の教員は、世界で有数の大きなクラスサイズの児童を相手に、世界一長時間働いているということです。日本の子どもたちの学力の高さは、こうした教員の献身的な努力によって実現されていると言ってもよいのではないかと思います。子どもたちの学力を上げるために、「それぞれの学校、教員がもっとがんばれ!」と言う前に、もっと余裕を持って一人ひとりにきめ細かく対応できるように、クラスサイズを小さくし、教職員を増やすなど、教育条件をきちんと整備していくということの方がはるかに大切なことだと思います。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://genkikko-koike.asablo.jp/blog/2009/04/21/4258654/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。