総務省の通知「指定管理者制度の運用について」と片山総務大臣の発言2011年01月23日 18時02分12秒

すでにご存じの方も多いかと思いますが、総務省が昨年12月28日に、総務省自治行政局長名で「指定管理者制度の運用について」という文書を出しました。また、この文書について、1月5日付の記者会見において、片山総務大臣がご自身の見解を述べています。

片山総務大臣は、いろんな自治体でこの制度が「コストカットのツール」として使われてきたこと、「本来指定管理になじまないような施設」にまでこの制度が使われてしまっていること、アウトソーシングを進めたことによって「官製ワーキングプアを大量に作ってしまった」ことなどについて率直に反省の弁を述べています。そして、「行政サービスの質の向上」という「一番のねらい」にそって指定管理者制度が運営されることと、各自治体において、職員の非正規化を進めてきたということを見直し、「業務と職員のバランス」を、自ら考えていってもらいたいという見解を示しています。

指定管理者制度そのものを撤廃するという趣旨ではありませんが、これまで私たちが、指定管理者制度の問題点として指摘してきたことを踏まえて、「行政サービスの質の向上「住民の満足度の向上」という観点から、指定管理者制度の「適正」な運営運営を求めたものであり、きわめて重要な意味を持つものであると思います。

以下に、総務省の「通知」とこの「通知」に関する1月5日の片山総務大臣の発言を載せておきますので、是非お読み下さい。太字部分は、私が付けたものです。

指定管理者制度の運用について

指定管理者制度は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設である公の施設について、民間事業者等が有するノウハウを活用することにより、住民サービスの質の向上を図っていくことで、施設の設置の目的を効果的に達成するため、平成15年9月に設けられたところです。

本制度は、その導入以降、公の施設の管理において、多様化する住民ニーズへの効果的、効率的な対応に寄与してきたところですが、地方公共団体において様々な取組がなされる中で、留意すべき点も明らかになってきたことから、これまでの通知に加え、下記の点に留意の上、改めて制度の適切な運用に努められるよう、地方自治法第252条の17の5に基づき助言します。

なお、貴都道府県内の市区町村に対しても、本通知について周知方よろしくお願いいたします。

指定管理者制度については、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときに活用できる制度であり、個々の施設に対し、指定管理者制度を導入するかしないかを含め、幅広く地方公共団体の自主性に委ねる制度となっていること。

指定管理者制度は、公共サービスの水準の確保という要請を果たす最も適切なサービスの提供者を、議会の議決を経て指定するものであり、単なる価格競争による入札とは異なるものであること。

指定管理者による管理が適切に行われているかどうかを定期的に見直す機会を設けるため、指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとすることとされている。この期間については、法令上具体の定めはないものであり、公の施設の適切かつ安定的な運営の要請も勘案し、各地方公共団体において、施設の設置目的や実情等を踏まえて指定期間を定めること。

指定管理者の指定の申請にあたっては、住民サービスを効果的、効率的に提供するため、サービスの提供者を民間事業者等から幅広く求めることに意義があり、複数の申請者に事業計画書を提出させることが望ましい。一方で、利用者や住民からの評価等を踏まえ同一事業者を再び指定している例もあり、各地方公共団体において施設の態様等に応じて適切に選定を行うこと。

指定管理者制度を活用した場合でも、住民の安全確保に十分に配慮するとともに、指定管理者との協定等には、施設の種別に応じた必要な体制に関する事項、リスク分担に関する事項、損害賠償責任保険等の加入に関する事項等の具体的事項をあらかじめ盛り込むことが望ましいこと。

指定管理者が労働法令を遵守することは当然であり、指定管理者の選定にあたっても、指定管理者において労働法令の遵守や雇用・労働条件への適切な配慮がなされるよう、留意すること。

指定管理者の選定の際に情報管理体制のチェックを行うこと等により、個人情報が適切に保護されるよう配慮すること。 8

指定期間が複数年度にわたり、かつ、地方公共団体から指定管理者に対して委託料を支出することが確実に見込まれる場合には、債務負担行為を設定すること。

問:

テレビ朝日の山根と申します。年末に指定管理者制度について、各都道府県・市町村の首長さんたちに、こういうふうな扱い方をしなさいということで通知を出されましたけれども、よく言われていますように、指定管理者制度においてもたらされる官製ワーキングプアというのがあると思うのですが、早急に、こういうふうな扱い方をしなさい、あるいは業者を選ぶ際、間もなくそういう時期にさしかかっている都道府県、市町村もあるかと思うのですが、その際に、そういうワーキングプアを作らないような、適切な使い方をしなさいということを、改めてきちっと、こう例示をすると言いますか、指導していくというお考えはあるのでしょうか。

答(片山総務大臣): 

年末に出しました通知はですね、いわば指定管理者制度をめぐる誤解とか、失礼ですけれども、理解不足とかですね、こういうものを解いていこうという趣旨なのです。何かですね、指定管理者制度が導入されてから今日までの自治体のこの制度の利用の状況を見てみますと、コストカットのツールとして使ってきた嫌いがあります。もちろんそれは全く否定するものではありませんけれども、指定管理者制度というのは、一番のねらいは、行政サービスの質の向上にあるはずなのです。俗にお役所仕事とかですね、そういうものから脱却をして、民間の創意工夫とか、それから経験とか、そういうものを導入することによって、ともすれば画一的で、規則などに縛られて、利用者本位ではないと批判されてきた公の施設の利活用について、新風を吹き込みたいと。行政サービスの質を向上したい、住民の皆さんの満足度を高めたいということなのです。

ところが、そっちの方よりも、むしろ、外注することによって、アウトソースすることによって、コストをいかにカットするかというところに力点が置かれてきたような印象を持っております。特に、私などが懸念していますのは、本来、指定管理になじまないような施設についてまで、指定管理の波が押し寄せて、現れてしまっているという。そういうことを懸念していたものですから、改めて、その誤解を解いたり、本来の趣旨、目的を理解していただくために出したわけですね。

まあ、あれを出せばですね、じっくり読んでいただければ、はっと気が付いていただけるのではないかなと思いますけれどもね。これからも、折に触れてですね、私なりの考え方を申し上げてみたいと思うのですが、ただですね、じゃあ、私が申し上げているようなことが法律上書いてあるかというと、必ずしもそうでもないですね。

具体的にどういうことかと言うと、私などはいつもよく言うのですけれども、例えば、公共図書館とか、まして学校図書館なんかは、指定管理になじまないと私は思うのです。やはり、きちっと行政がちゃんと直営で、スタッフを配置して運営すべきだと、私なんかは思うのですね。私が鳥取県知事のときもそうしてきました。だけど、じゃあ、それが法律にそう書いてあるのかというと、必ずしもそうでもない。何でも出せるような、そういう仕組みになっているものですから、あとは、どう言うのでしょうか、良識とか、常識とかですね、リーガルマインドとかですね、そういう世界に入るのだと思うのですけれども。そういうものを喚起したいと思って出したわけであります。

もう一つの認識は、これ指定管理だけではなくてですね、従来からの外部化というものを、総務省として随分進めてきました。定員削減とかですね、それから総人件費の削減という意味で、アウトソースというものを進めてきたのですね。それがやはり、コストカットを目的として、結果として官製ワーキングプアというものを随分生んでしまっているという、そういうことがありますので、それに対する懸念も示して、少し見直してもらいたいなという、そういう気持ちもあって、お出ししたわけです。

あれで、どういう反応が出るかですね、反応が無いか、有るか、有ってほしいと思うのですけれども、しばらく見てですね、また必要がありましたら、次の策も考えてみたいと思っています。自治体はですね、地元の企業の皆さんに対しては、正規社員を増やしてくださいということをよく働き掛けるのですよ。当然ですよね。やはり正規雇用を増やしてくださいということを働き掛けるのですけれども、当の自治体が、自ら内部では非正規化をどんどん進めて、なおかつ、アウトソースを通じて官製ワーキングプアを大量に作ってしまったという、そのやはり自覚と反省は必要だろうと、私は思います。そういう問題提起の意味も含めて見直しをしたということです。

これは、ですから指定管理者制度についての理解を、本当の理解を深めていただきたいという通知と、それから、もう一つはですね、かねて申し上げておりますけれども、集中改革プランという法的根拠の無い仕組みを全国に強いてきたという、これの解除ですね。もともと法的に有効な通知ではありませんから、解除という言葉がいいかどうか分かりませんけれども、以前進めてきた集中改革プランにとらわれることなく、自治体では、業務と職員とのバランスは自ら考えて、これから定数管理などをやっていただきたいと。この二つであります。

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